Top Page » 世の中の事 » This Page

海士町@隠岐の注目すべき取り組み:まちづくり編

カテゴリ:世の中の事


海士町在住者による島根県隠岐郡海士町の取り組みのご紹介。
「教育」「産業」「まちづくり」の3部構成も本記事がラストです。

海士町@隠岐の注目すべき取り組み:教育編
海士町@隠岐の注目すべき取り組み:産業編

※紙面の都合上、独断と偏見で一部の取り組みのみ紹介させていただいております。
※記事の情報は2013/4/26現在

はじめに:本記事における「まちづくり」の定義

本記事では「まちづくり」を「住民参加や生活向上を図る取り組み」や「行政以外のアクターが主体の取り組み」と定義します。
そのため、ハード面ではなくソフト面での取り組みが主となります。
「まちづくり」というタームの従来の用法とは異なりますので、ご留意ください。

1.定住促進の取り組み

これだけIターンが集まる海士町ですから、定住促進に触れないわけにはいきません。
多くの自治体が視察に訪れるのも、その秘密を探るのが主な目的となっていることでしょう。

しかし、個人的な印象として、定住促進のために海士町が特別な制度設計をしている印象はありません。
移住時には住宅の斡旋はしてもらえますが、特別な控除や補助が用意されてはいません。
全島あげて歓迎!なんてあるわけないし、移住したその日から島の人間として生活することが求められます。
強いて言えば「定住促進住宅」と銘打ってUIターン向けの単身・世帯用の住宅をつくりまくっていることくらいでしょうか。
これもIターンを積極的に受け入れたいから、というより、単に必要に迫られた結果(本当に家が足りない!)と感じます。

ではなぜそんな海士町にIターンが集まるのか?
答えはシンプルで、「面白そうな仕事・役割があるから」だと僕は思っています。
僕自身、海士が持つ自然と文化の豊かさだけに惹かれて移住したわけではありません。
何よりも「やりたい仕事」「チャレンジングな課題」「一緒に働いてみたい人」の存在があったからです。

特に都市部で働いている人が田舎に関心を持つとき、多くの場合「やりがい」「生きがい」への期待があります。
のんびりとした暮らしへの憧れだけでなく、「自分がしたことの影響範囲が見えるような仕事がしたい」「社会に働きかけたい」という欲求にも注目する必要があります。

海士町はチャンスを求めてきた若者を拒みません。
と同時に、チャンスをつくりつづけているのです。
それは決して定住促進の文脈ではなく、地域をもっと良くしたいという純粋な想いが燃料源になっています。
だからこそ海士町にあるチャンスはより魅力的なものとして、若者たちの心をつかんでいるのではないでしょうか。

2.隠岐自然村

「小野 篁(おののたかむら)」という人物をご存知でしょうか。
彼は文武両道×イケメンと非常に優れた人物で、平安時代に活躍しました。

わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣舟

これは百人一首に収録されているものですが、海士町へ島流しをされる際に彼が本土の美保関で歌ったのがこの歌。

小野篁が建てたとされるお寺が海士町にあります。
そのお寺・金光寺がある山は金光寺山と呼ばれ、春には桜並木が華やぎ、町内の花見スポットになっています。

前フリが長いですが、この歴史ある金光寺山から島内を見渡すようにあるのが「隠岐自然村」です。
隠岐自然村はエコ・ツーリズムや自然環境教育などを実践する教育研修施設です。
宿泊もできるので、僕も何度かお邪魔させていただきました。

「しまのこ自然楽校」などのイベントの他、隠岐島前地域の自然を体験するエコツアーや釣りなどのガイドも受けつけています。
僕も竹でイカ飯づくりを体験しましたが、子供づれで参加したらめちゃめちゃ面白いだろうなというプログラムが目白押し。
スタッフのみなさんは隠岐の自然に精通しているので、長年島に住んでいる方も知らないような貴重な話が伺えます。

隠岐の自然を満喫したい方にはお勧めの宿泊先となっております。
(交通の便が悪いのが少しネックですが)

3.集落支援員

総務省が実施している「集落支援員」制度をご存知でしょうか。
農水省の「田舎で働き隊」事業、総務省の「地域おこし協力隊」などと似たようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。

集落支援員制度の説明は以下のとおり(総務省HPより引用)
“地域の実情に詳しく、集落対策の推進に関してノウハウ・知見を有した人材が、地方自治体からの委嘱を受け、市町村職員と連携し、集落への「目配り」として集落の巡回、状況把握等を実施”

この海士町でも教育委員会を中心として集落支援員が海士町内計14地区に入って活動をしています。
集落支援員のメンバーは島内出身者のみでなくIターンも加わっています。
集落に入る際には島内の人間だから入り込めること、島外の人間だから言えることがあります。
うまく役割分担をしながら、効果的な支援の方法を探ることが出来るチームになっています。

「集落支援」と聞くと、高齢者の買い物支援や草刈り、行事の手伝いなど、「何でも屋」のような印象を受ける方もいるのではないでしょうか。
海士町の集落支援員は、集落の自立の支援を第一としており、「何でも屋」を引き受けることを避けています。
関係性をじっくりと築き上げながら、少しずつできることをお手伝いし、集落の自立を引き出す。
そのあり方には学ぶべきことが多いように思えます。

海士町の集落支援員で個人的に面白いと思うのは、「古道具屋さん」の取り組みです。
住む人の居なくなった家の整理をすると、食器や家具の処理が問題になりがちです。
まだ利用できるものをゴミとして処理するのはエコロジーの観点から望ましくありません。
また、当時利用していた家具などを廃棄することは思い出を捨てることにもつながり、抵抗感があるもの。
そのようなニーズに応え、利用できるものは引き取り、他に必要とする人に譲る仕組みを集落支援員がつくりました。

この古道具屋さんは教育委員会が管理していた旧保育園の施設を活用したものです。
現在は土日のみの営業ですが、月に1度のケーキの日など、イベントも多数開催されています。
古道具を買い求める人だけでなく、子連れや島内のIターンで賑わう、憩いの場になっています。

 

※海士町長が書いた書籍もありますので、興味のある方はそちらもぜひ。


関連する記事