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小さな組織の多忙感について

カテゴリ:自分事

手探り・手作りの組織の現場から

海士町は小さな島だが、それでも小さな組織と呼べる集団は幾つかある。
チームの人数規模は最大でも20名を越えないものがほとんどだ。

時代の流れもあって、全体の傾向として各組織は徐々に拡大している。
そしてその多くがIターン(島外出身者)ばかりで構成されている。

そうしたチームの特徴は、「想い先行」であること。
組織づくりやマネジメントの経験者がいるわけでもない。
「スタートアップを立ち上げたことがあります」といった猛者もいない。
大企業でもきっと活躍できるくらいに優秀な人材が揃っているが、
20~30代が多く、結果的に組織作りは手探りで始まる。

恐らく、様々な地域の小さな組織の多くは
こうした課題を共通のものとして抱えてるのではないだろうか。

僕自身は、移住4年目に入ってからようやく(というべきか)
組織運営に関心(とささやかな責任感)を持つようになった。

ゼロからの立ち上げはエキサイティングである一方、悩みも絶えない。
そんな日ごろの悩みとそれにまつわることをだらだらと書いてみたい。

ずばり、「忙しい」

最近忙しそうだね

違う職場の人と、すれ違いざまにそう声をかけ合うことが日常になった。
「最近」が1、2年続いている感じ。

誰もが想いを持ってこの島に来ている。
やりたいことがたくさんあり、責任感もある人ばかりだから、
仕事を一つ一つ完了させても、業務量を増やしてしまう傾向にある。

「忙しい」。これが小さな組織の最大の悩みではないか、と思う。

原因を考えてみると

・規模が小さいから忙しくても人を雇えない
・少人数ゆえに、一人一人の責任と業務範囲が広くなりがち
・組織にバッファがないので、できる人に重い仕事が集中する
→人材育成が進まず、状況が改善されない

と、どれも似通ったような問題。

「忙しさ」を解消する手はあるのか?

ここで一般論的に求められるのは恐らく「マネジメント」であり、
組織として優先順位をつけ、「やらないこと」を明確にするべきなのだと思う。

やることが増えるのは組織として成長しているからだが、
成長は描けても成長痛まで目を向けられていないケースが多いのではないか。

つまり、「やらない」を決めるのは難しい。
ぱっと思いつく一般的な策としては

1.リーダー、マネージャーが優先順位づけする
2.メンバー間コミュニケーションで優先順位づけする

などが挙げられると思うが、

1.リーダー、マネージャーが優先順位づけする
→リーダー自身が忙しい、あるいはその経験に乏しい

2.メンバーのコミュニケーションで優先順位づけする
→丁寧にコミュニケーションをとり続ける時間がない、結論が出せない

といった課題に直面してしまうことがほとんどなのだと思う。
そもそも忙殺されているのだから、時間を確保するのも難しい。
仮に話し合いの時間が取れても、それで改善されなければ次につながらない。

じゃあどうすればいいのか、を今考えているのだが、
もがき始めてみると、幾つかアイデアは出てくる。

・事例を知る

課題の渦中にあるときこそ事例から得られることは増える。
今がまさにそんな状況で、「答え」を外に求めている。
あらゆる小さな組織の通る道だからこそ、先人に学ぶ方が効率も良い。

・仲間をつくる

組織の中に仲間をつくり、問題意識を醸成する。
「忙しさ」が組織全体の問題として共有されれば、
ボトムアップの動きにつながるかもしれない。

また組織外に仲間をつくるのもいい。
相談相手ができればお互いの実践の共有ができるし、
共感してくれる人がいるということ自体が安心材料になる。

・無理やりにでもコミュニケーションの時間をつくる

早朝・深夜あるいは土日祝日問わず、
無理やりにでもみんなで話す場を持つ。

それも一回ぽっきりでなく、全員が納得する、
納得までいかなくても全員が理解し、結論を出すまで時間をかける。

力技だが、それだけコミュニケーションの意義は大きい。
現場でそう感じることは思った以上に多かった。

・無理やりにでも人を育てる

優先順位づけが難しいのであれば、
一時的には目をつぶってでもできる人を増やすしかない。

そもそもできる人材を採用するべきではなかったか、
というツッコミが来そうだが、今回は事後の話にフォーカスしたい。

まとめ:多忙感は組織をゆるやかに締め付ける

一つの課題をクリアした先には次の課題が待っている。
どうあがいても課題がない組織にはならないし、
やることがなくなったらそれは組織の死なのだと思う。

だからこそ 忙しいというのは嬉しい悲鳴なのだが、
「多忙感」が継続すると多くの人は疲弊する。

忙しさを放置していると、新しい機会への挑戦もしづらくなる。
挑戦も慣れの部分はあるが、慣れている人だけが挑戦し続けるのは辛いし、
せっかく挑戦しがいのある新しい仕事を持って帰ってきたのに、
現場では負担感の方が大きいなんてこともありえるだろう。

海士町全体を取り巻いている(ように見える)多忙感は、
これまでの多くの挑戦の賜物である。
だが、持続可能な島の実現を阻む壁はこの先も待ち構えている。

「決断」には「断つ」という文字が含まれている。
そんなに遠くない未来に「決断」を迫られる日が来る。
そんな予感がしている。

(こんなこと書いたら各方面から怒られるかもしれないなと思いつつ)

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