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「嫌われる勇気」の簡潔なまとめと感想

カテゴリ:自分事

「アドラー心理学」について書かれた以前から評判の本書。
知人から強く勧められたので借りて読んでみた。
「哲人」と「青年」の対話篇という珍しい形式をとっている。

せっかくなのでメモを取りながら読み進めてみたのだが、
特にメモを読み返して自分の中に響いた部分をまとめてみたいと思う。

このまとめはあくまで個人的な関心に基づいて書かれている。
本書の要点はここにまとめられた限りではないということは一応書いておく。

「嫌われる勇気」とは何か

「嫌われる勇気」というタイトルが示すものは何か。
もしかしたら「7つの習慣-成功には原則があった!」など
著名な自己啓発書を読んだことがある人なら何となく予想がつくかもしれない。

本書では「他者の承認を求めてはいけない」とはっきりと書かれている。
個人的に興味を持ったのはこのあたりだった。

哲人 たしかに、他者の期待を満たすように生きることは、楽なものでしょう。自分の人生を、他人任せにしているのですから。たとえば親の敷いたレールの上を走る。ここには大小さまざまな不満はあるにせよ、レールの上を走っている限りにおいて、道に迷うことはありません。しかし、自分の道を自分で決めようとすれば、当然迷いは出てきます。「いかに生きるべきか」という壁に直面するわけです。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

先行きへの不安、リスクを回避するために「他者の承認」を必要とする。
周囲の目を気にする背景にはこういう態度があるかもしれない、と確かに思う。

哲人 きっとあなたは、自由とは「組織からの解放」だと思っていたのでしょう。家庭や学校、会社、また国家などから飛び出すことが、自由なのだと。しかし、たとえ組織を飛び出したところでほんとうの自由は得られません。他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれないのです。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

言われてみれば当たり前のことだが、行動には常にリスクが伴う。
そのリスクをコストとして支払う”勇気”がなければ自ら行動を選ぶことはできない。

青年 裏切るかどうかは他者の課題であり、自分にはどうにもできないことだと?肯定的にあきらめろと?先生の議論は、いつも感情を置き去りにしています!裏切られた時の怒りや悲しみはどうするのです?
哲人 悲しいときには、思いっきり悲しめばいいのです。痛みや悲しみを避けようとするからこそ、身動きが取れず、誰とも深い関係が築けなくなるのですから。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

人と人との関係の中で痛みや悲しみをなくすことはできない。
だからこそ、他者と深い関係を築くためにコストを支払う勇気が必要となる。

うまくいくかどうか、だけで考えればコストは支払えない。
結果はいつでも、コストを支払う前ではなく後にわかる。

貨幣経済のおかげで、一定の金銭を支払えば特定の価値を得られるようになった。
それはあたかもコストを支払う前に結果は判明している、とも言える。
(金額が価値に見合わないことが判明すればクレームをつければいい)

コストを支払わなければなんのフィードバックも生まれない
言ってみれば自然界の常識であるこの事実に対して
リスクを最小限に抑える試みで満たされた現代社会の仕組みのために、
当たり前に生きるということが不自由になっている、と言えるかもしれない。

僕は、これが「嫌われる勇気」なのだと解釈した。

感想など

・アドラー心理学を求める現代社会という見方

アドラー心理学には芦田宏直氏の「機能主義」批判を想起させる何かがある、気がする。
そこを掘り下げればなぜ本書が多くの読者を獲得したのかが分かるのではないか。

振り返ると、幾つかの過去記事には通底する問題意識があるように思う。

大量生産/大量消費される価値観と若者の不安

社会貢献をしたいのか、自分の思い通りにしたいのか、はっきりさせた方がいい

書き出すと長くなりそうなのでまた別の機会に改めて整理したいと思う。

・個人的な評価と感想

さすがに広く読まれているだけあって読みやすいような工夫がある。
それゆえに、世に溢れている自己啓発書との差別化は難しいのかもしれない。

僕も読後の感想を本書を貸してくれた知人とシェアする中で
本の中身を越えて「この本が世に受け入れられたわけ」に思い至ることができた。
自分の内だけで閉じずに気になったところを言い合うだけでも、
人によって注目する点に違いが出てくるという当たり前のことに気づける。
それが本書の主張を実践する第一歩になるのかもしれない。


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