Top Page » 読書の記録 » This Page

「2020年の大学入試問題」と東大生ノートの話

カテゴリ:読書の記録

とある先生が紹介していた本書。

「生きる力」というものがある。
文科省によると、この「生きる力」を養うのが「学力の3要素」だそうだ。

◎知識・技能
◎思考力・判断力・表現力
◎主体性・多様性・協働性

ところが、現行の大学入試ではセンター試験・2次試験において
「思考力・判断力・表現力」を問うのが関の山となっている。
小中高における学習の事実上の集大成がこれなのだから、
普段の授業で「主体性・多様性・協働性」を取り扱われることもない。

「ゆとり教育」に始まる一連の改革は、普段の授業を変える試みだった。
が、ご存知の通り、期待通りの成果は挙げられなかった。

そして、文科省はついに本丸に狙いを定めた。

2020年、大学入試はどう変わるのか

結論から言えば、まだはっきりと決まっているわけではない。
著者は海外の試験制度等も紹介しながら、
学力の3要素と新しい入試制度をこう結び付けている。

・高等学校基礎学力テスト ― 知識・技能
・大学入学希望者学力評価テスト ― 思考力・判断力・表現力
・各大学個別独自入試 ― 思考力・判断力・表現力+主体性・多様性・協働性

位置づけとしては現在のセンター試験に相当する
「大学入学希望者学力評価テスト」はPISA型の問題が想定されているそうだ。

各大学個別独自入試ではさらに「主体性・多様性・協働性」が問われる。
これを著者は「自分軸」と表現しているが、なるほど、
小論文の問題文の例には「あなた」という文言が頻出しており、
かつ賛成/反対の明示を求めず、「考えを述べよ」という形式が目立つ。

批判的思考を求めるならば、軸となる自分が必要だ。
著者の指摘は当たり前だが新鮮だった。
ちなみに、この「自分軸」を育むためにも
アクティブラーニングが重要なのだ、という話だが、
それはまた別記事にまとめてみたい。

「自分軸」と東大生ノート

本書を読み始めてまもなくのタイミングで、
太田あやさんの高校生向けの講演を聞く機会があった。

そこで印象に残ったのは2つ。

・東大生の美しいノートは試行錯誤の賜物だということ。
目標達成のため、自分に合ったノートをつくるという
東大生たちの執念が、講演の各所で感じられた。

・ルールを決めてマークや色を使うという話。
ノート術としては当たり前といえば当たり前だが、
「何が重要なのか?」を最後に判断するのは常に自分である。
そう、東大生のノートは「判断」の積み重ねの結果なのだ。

アクティブラーニングが流行っているためか、
ノートをとる行為は受動的なものとみなされがちである。

しかし、真に意味のあるノートをとるためには、
自分に即したものを自分で考え判断し試行錯誤するという
非常に能動的な学習のプロセスが発生する。
これだって「自分軸」を育んでいると言えるんじゃないか。

「どれくらい予習をしておいたらいいかわからない」
と質問している生徒がいた。○ページ分…?○単語分…?

太田さんの「それは自分が一番分かっているはず」
という回答に、僕は思わずうなずいてしまった。

大学入試改革の方向性自体に賛否はないが、
今の教育でもできることを取りこぼさないでおきたいものだ。

関連する記事