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「人を伸ばす力」の簡単なまとめ

カテゴリ:読書の記録


「内発的動機づけ」というテーマについては
ダニエル・ピンク著の「モチベーション3.0」が話題になったが、
本書はその原典的な立ち位置にある。

内発的動機づけは人間の3つの欲求によって支えられている。

・自律性への欲求
・有能感への欲求
・関係性への欲求

本書においては、内発的動機づけを高めることで、
人はよりよく学習し、目標を達成できるようになり、
精神を充実させることができる、とされている。
つまり、いかにこの3つの欲求を満たすかがポイントである。

自律性への欲求

ポイントは、意味のある選択が自発性を育むという点にある。人は、自ら選択することによって自分自身の行為の根拠を十分に意味づけすることができ、納得して活動に取り組むことができる。同時に、自由意志の感覚を感じることができ、疎外の感覚が減少する。しかも、もし選択の機会が提供されるならば、人々は自分たちが一人の人間として扱われていると感じる。このように、選択の機会を提供することによって、問題をうまく解決することができるのである。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

自ら選択する機会が提供されることで、人は自律的になれる。
それは周囲の働きかけによっても実現できる、というのが肝だ。

選択の機会を提供することは、自己中心的な態度を許すこととは違う。
子どもにあれこれと指図したり怒鳴ったりして接するのでなく、
子どもの目線に立ち、子どもの自律性を尊重することで、
「しなければならないこと」を「やらされ」ではなく、
自ら納得し、責任感をもって取り組めるようになる。

本書においては外発的動機づけは批判の対象である。
学校での読書促進のために本を借りた冊数に報酬として
ポイントを付与する試みに触れ、核心をえぐっている。

たとえば、ピザの店と提携した報酬プログラムでは、読書のポイントがピザと交換できた。実はこの場合、ピザのほうが読書より価値が高いことを暗に教え込んでいるのである。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

外発的動機づけは、行為そのものの価値を貶める危険性をはらむ。
むしろますます他律的な傾向を強化することになりかねない。

有能感への欲求

内発的動機づけがもたらす「報酬」は、楽しさと達成の感覚であり、それは、人が自由に活動をするときに自然に生じる。したがって、その仕事をこなす力があるという感覚は、内発的な満足の重要な側面である。うまくこなせるという感覚それ自体が人に満足感をもたらす。そして、生涯にわたる職業へとみちびく最初の力にもなりうる。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

勉強になかなか取り組まない生徒というのはどこにでもいる。
たいてい、そうした生徒は「やる気がない」と表現されるわけだが、
多くの場合は「意欲」でなく「有能感」の問題なのかもしれない。
できそうもないことにも意欲的であれ、というのは考えてみれば酷な話だ。

動機づけられるためには、自らの行動と望む結果のあいだに関連があると知る必要があり、行動と結果の関連に気づくようにする仕組みによってこの両者は結びつけられる。(中略)もし、自分の行為によって望む目標に到達できると信じなければ、このような仕組みが欠けていることの責任がシステムや組織にあるのであれ、上に立つ人のせいであれ、動機づけられることはないだろう。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

したがって、自律性と同様に有能感の発達を支援するときには、
相手の目線に立ち、最適なレベルのやりがいを提供するべきである。

関係性への欲求

これまで述べた通り、「自律性」と「有能感」の獲得は
周囲の支援を得ることでも実現可能である。

”人が自律するようになるためにはそのための支援が有効だ”

その意味において、自律は「独立」とは異なる。

高校時代は、若者たちが両親からある程度の独立を達成しようと格闘する時期であり、この発達段階においては、家族との愛着関係を放棄することが最重要課題であると、多くの本に書かれている。しかしライアンとリンチは、十代の若者たちの統合性と精神的健康にとって必要なのは、両親に対する自発的な、あるいは自由意志による依存(意地をはって両親から独立しているよりも)であることを明らかにした。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人間は社会の中で、つまり人との関係の中で生活する。
社会の中で生きる上で求められる責任は、
個人が自分の世界に浸ることだけを許さない。
ここにおいて「関係性への欲求」の役割が重要になってくる。

他者とつながっていると感じていたいという欲求が、人に文化の諸側面を自然に身につけさせ、あるいは同化させ、その結果創意あふれる社会的貢献をするようになる。それが起こるのを援助しているのが、重要な他者からの自律性への支援である。関係性への欲求はこのように、社会化の担い手による自律性の支援と結びついて、責任をもちながら、同時に真に自由になれるよう導いていくのである。社会化されるというのはこういうことである。少なくともこのことばのもつ、積極的で健康的な意味ではそうである。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

感想・・・性悪説から性善説へ

以上の内容は、学校や組織に根付く
一般的な人間観とは異なることに気づかねばならない。

内発的動機づけとそれを支える3つの欲求を中心に据える過程では、
その土台としてのパラダイムの転換が求められるのだろうと思う。
結局はここが最大の課題になるのではないか。

その他、目を引く箇所がいくつもあったが、
それは別記事でまとめている。

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