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松嶋駿という高校生の学生生活を象徴する一枚の写真について(前編)

カテゴリ:世の中の事

先日の記事でインタビュー企画をこれから進めていくということを告知した。

検討中のインタビュー企画について

その第0弾として(つまりは試験的に)、先日、能代出身で現在は通信制高校に通う松嶋駿君にインタビューを敢行させてもらった。といってもこちらもまだ明確な方針があるわけでもなく、手探りの状態で、でも、一応ICレコーダーは回して。

後日、文字起こしをし、それを松嶋君に読んでもらった。「公開してもよいか?」と聞くと「お任せします」という実に潔い回答をもらったので、試しにこのブログ上にアップすることにしてみた。

先にお詫びをすると、ICレコーダーの充電池が劣化していたためか、フル充電で臨んだにも関わらず録音の途中で電源が落ちてしまった。なので、計1時間近くにわたるインタビューの中で、文字起こしできたのは冒頭から40分間程度の内容になっている。

とはいえ、それでも文字数としては9,000字ほどに達した。インタビューを文字起こしした上で最低限読めるようにまとめるのも恥ずかしながら初めてのこと。薄々感づいていたとはいえ、なかなかの作業量だった。到底編集などできなさそうだな、と思い、ほぼインタビュー時のやり取りをそのまま掲載してみることにする(長いので3回に分けて)。

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松嶋駿という高校生の学生生活を象徴する一枚の写真について(前編)

中編はこちら/後編はこちら

○インタビュイーのプロフィール
松嶋駿(まつしま・しゅん)。16歳。某県立高校(通信制)1年次在籍の傍ら、同世代による同世代が楽しめる教育をデザインする団体「Lift-Up」を主宰、秋田県内の大学やフリースペースなどでワークショップを開催している。そのほかにもいくつかの団体にコミットし、ワークショップのメンタリング等を行っている。中学校では「戦略的不登校」と銘打ってホームスクーリングを独自に取り入れ卒業。その時の思いから人生を通し教育に関わりたいと志している。

(以下、松嶋→松、秋元→秋)

秋:では、松嶋君の学校生活を象徴する写真があれば見せていただけないでしょうか。

松:写真ですが、2枚の内どれにしようかなと迷ったのですが、これにしました。

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秋:この写真。飛行機からの写真ですか?

松:はい。高校生活を半年ちょい過ごしてみて、まずスピードが早いなと。これは飛行機の窓からの写真ですが、スピードがめちゃめちゃ速い。つまり、僕の生活の変化がすごいということを表しています。写真左上の街中を「普通」と例えると、そこからすごい速さで離れて行っているのかなと。そういう意味で、高校生活のイメージとしてこの写真を選びました。

秋:すごいスピードで進んでいる。日常が。

松:ちょうど今、年末に当たってこの1年を振り返っていて、なぜそれほどの速さでここまで進めることができたのかを考えています。私の家は母子家庭だし、能代といってもその端っこの普通の田舎の人だったわけで。唯一取柄があるとしたらパソコンが自宅にあり、幼少のころからインターネットに触ってきたというくらい。そういう環境の中で、今の自分はどうして大人の人たちとたくさん関わっていて、大学生とも関わることができているのかを立ち止まって考える時間を取っている。自分でも変化に追いつけないくらいに進んできたかなと。

秋:自分でも追いつけないくらいに変化している。何が、変化していますか?

松:去年と比べると、明らかに学校外の人と関わる時間が思いっきり増えました。あとは能代の外に出る時間ですね。毎週秋田市に来ている。あとは、そうですねえ、試験勉強以外で頭を使うことがとても増えました。

秋:今までの時間の使い方が大きく変わった。

松:中学の時は学校前提でした。行ったり行かなかったりではあったんだけども、一応学校という場があって。ふらっと行けるというか、ちょっと調子悪いなあというときでもきっかけづくりになるというか、そういう場だった学校がばさっとなくなって。今は通信制高校なので通学も月2回となると、行きたいときに行くこともできないし、学校がこの日だけとなるのが中学の時との大きな違いで。

秋:ばさっとなくなったときはどんな気持ちだった?

松:一度、 5月くらいに大きく落ち込みましたね。3月に大きな旅行に出かけて、東京でワークショップに参加したり、カタリバの全国大会(マイプロアワード2015)に行ったりして、すげーな、と。刺激が強すぎて、自分がなにせばいいかわかんなかった。学校に行く時間がなくなってスケジュールの中身が空っぽになって、自分で何しようと思ったときに、割と混乱したというか、そういうときが一時期ありました。

秋:今まではそんな混乱がなかった?

松:はい、中学校の時は、学校は行かなかったけど学校のカリキュラムに並行するのが前提で、別に自分のプロジェクトを起こすこともなかったので。

秋:学校と並行した時期が中学のときにあって、それでリズムを作っていた学校というものがばっさりなくなって、何をすればよいかわからなくなった。

松:そういう時期がありましたね。したいことはあるけれども、どれを軸に選んでいくのかなあということを、一時期悩みましたね。

秋:今は軸がある?

松:あります。

秋:その軸って何ですか?

松:まず、自分が運営する「Lift-Up」という団体があって、それを来年の3月か4月ちょいくらいまではやると思います。その後は留学の準備とかで試験勉強に戻る時期に入り、来年は1年間ずっと留学をする予定です。その後留学から帰ってきたら、ちょっと時間をおいて受験勉強という感じで捉えています。その中で考えているのは、結局自分はやっぱり教育がやりたいなあと思っていて。高1の1年間は、「将来大人になってからやりたいことをやろう。試験勉強をして、大学入ってそこから考えよう」ではなくて、「今やれる範囲でやりたいことをやっちゃおう」と考えるようになりました。そうした経験を積む、大学入試に例えるならAO入試の実績を積むというか。逆に試験が近くなれば試験に集中するので、AOの実績を積むのが今年1年間なのかなと。

秋:今、軸ができていて、ある程度高校3年間の目途が見えているのかなというふうに聞いています。その中で、改めて、軸がなかった時の気持ちを聞いてみたいです。

松:情報だけが入ってくる状態でした。5月くらいは3週間くらいFacebookに一切顔を出さなかった。周り(Facebookの友人)が東京の高校1年生でちょうど中高一貫の中間にあたるから一番活発な時期で、マイプロ出たり、株式会社つくったり。「えっ! 自分と同い年で……!」みたいな感じで。自分が中学生だった当時は、インターネット上で彼らと関わることがあっても、割に遠くに感じていた。それが実際に会ったことで存在が近くなって、割と焦りを感じたというか。なんだかんだで自分は幼少期のころから長いこと特異な人間だって言われていたと実感としてあったのが、「ああ、自分はまだまだなんだな」みたいな、そういう焦りがありましたね。それもあって、通信制高校に入学してから時間が空っぽになったところで、自分はどうすればいいんだろうとますます焦る一方で。受験勉強を前提にした戦略的な時間の使い方というのは2年間の実績があったけど、それを一回崩してゼロにして、改めて時間の使い方の見直しだったり、例えばプロジェクトをやるといったことも含めた考え方の切り替えだったりに時間がかかりました。

秋:当時は焦りを感じていた。何に対して?

松:結局……(沈黙)。

秋:今までは受験勉強でいっぱいのスケジュールが空っぽになった。それを埋めるだけの意義ある時間の使い方をできない自分と、それができている東京の人たちがいた。もし、ずっと空っぽの状態のままだったら、自分はどうなると思う?

松:受験勉強を続けたいなという思いが当時はあったので、そのままだと未来が危ないと感じていました。大学受験のときに困るなと。通信制高校の授業内容だと、大学に入れるだけの難易度が絶対にカバーできないので。通信制高校だからということで、地位というか、能代高校に入った人は「能代高校なの、ああすごいね」って言われるけど、自分は、実績というか、成果を出さなきゃといけないなあという想いがあって。

秋:ごめん、その部分、ちょっと追いつけなくて。もう1回話してくれる?

松:ええと、能代高校にいった子たちは、「自分は能代高校です」と言えば、まず普通に「勉強しているね」と周りから思われる。「通信制高校です」と言えば、自分で何か成果を出さないと、受験のときに、どういうことをしてきたのという話が面接官からされるだろうなあと思っていて。

秋:ちょっと確認なんだけど、そもそも推薦かAOで大学受験をもともと受けるつもりだったということ?

松:いや、元々一般で受験するつもりでした。今の話で入試というのは例えで、私が言っているのは社会的な見方の話です。私が、「通信制高校です」って自己紹介したときに、「普段どういう生活をするの」って聞かれる。「能代高校です」って言ったら、「お、勉強しているな」って思われるけど、通信制高校って言うと「お……」みたいな。そういう社会的イメージに対する恐れがあって。

(以下、中編に続く)

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