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海士町@隠岐へのアクセスと諸注意

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海士町に移住してから知り合いが何度か遊びに来てくれています。しかしながら、「船を含めた移動経路をどうすべきかわからない」という問題にいつも直面します。ここに海士町への行き方とちょっとした”諸注意 “についてまとめておきたいと思います。

※特に後半の諸注意についてご一読いただくと、スムーズな旅を楽しんでいただけるかと思います。
※ダイヤは変更になる場合がありますので、必ず隠岐汽船のHP等で事前に確認してからの手配をお願いいたします。
※筆者の経験を中心にまとめているので、不足や誤りがあればご指摘いただけますと喜びます。

海士町って、どうやったら行けるの?

海士町は離島ですので、本土からの移動はフェリー(と高速船)を利用するほかありません(※隣の島には空港があるので、飛行機を利用することも可能、詳細は後述)。本土と隠岐をつなぐフェリーを運営するのは「隠岐汽船」という会社です。船の移動が必要という点で、すでに一般の旅行者にはハードルの高い旅行先となってしまっています。

○本土-海士町間の経路

本土から海士町へ入る経路としては大きく2パターンあります。

1.本土の港からフェリーで海士町に入る

こちらが定番の移動経路になります。

隠岐汽船の船が出る港は、本土側に「境港」と「七類港」の2つがあります。前者は「水木しげるロード」で有名ですね!ちなみに「境港」と「七類港」は車で20分ほど離れているのでご注意ください。

境港には港のすぐ近くに駅があり、米子空港や米子駅に電車で移動することができます。一方、七類港付近は鉄道が通っていないので、たとえば米子空港から七類港へ移動する場合はバスやタクシーを利用する必要があります。

なお、フェリーは車やバイクを載せることができます(高速船は不可)。しかし車を載せる場合は料金が非常に高くなるので、先に料金を確認されるのが良いでしょう。

2.空路で隠岐の島町に入り、隠岐の島町からフェリーで海士町に入る

隠岐諸島の一つ、隠岐の島町には「隠岐空港」があり、伊丹空港間と出雲空港間とそれぞれ接続しています。「伊丹空港→(空路)→隠岐空港(隠岐の島町)→(フェリー)→菱浦港(海士町)」といった移動も可能です。

ただ、隣の島といっても隠岐の島町から海士町まではフェリーで1時間ほどかかるので、ご注意ください。

○モデルコース(2012/9/6現在)

◆東京→海士 10時ごろ発→17時半ごろ着

※2012年時点での情報です。ダイヤが変更になっている可能性がありますので、事前に必ずご確認ください。

10:05 羽田空港発 → 11:25 米子鬼太郎空港着(ANA)
12:00 米子空港駅発 → 12:14 境港駅着(JR)
14:25 境港発 → 17:05 別府港(西ノ島町)着(フェリーしらしま)
17:20  別府港 → 17:26 菱浦港(海士町)着(内航船)

別府港でフェリーを降り、隠岐観光の内航船に乗り換える必要がある点にご注意ください。フェリーを降りて小型船に乗り換える人の流れがあるので、乗り換えに戸惑うことはないと思います。

JRはもう一つ後のものもありますので、空港でも境港でも昼食が食べられます。

◆東京→海士 7時ごろ発→12時半ごろ着

06:50 羽田空港発 → 08:05 米子鬼太郎空港着(ANA)

(米子空港~七類港:タクシー 20~30分)
09:30 七類港発 → 12:40 菱浦港着(フェリーくにが)

東京を早朝に出れば昼に海士町に着くことも可能です。注意したい点は、米子空港~七類港間の移動です。七類港までは鉄道が通っておらず、朝はバスの時間も合わないため、タクシーを使わざるを得ません。海士への移動はどうしても時間がかかるので、少しでも滞在時間を延ばしたい!という方におすすめのコースです。

◆海士→東京 9時半ごろ発→17時半ごろ着

※2012年時点での情報です。ダイヤが変更になっている可能性がありますので、事前に必ずご確認ください。

09:40 菱浦港発 → 13:10 境港着(フェリーしらしま)
13:20 境港駅発 → 13:35 米子鬼太郎空港着(JR)
16:05 米子鬼太郎空港発 → 17:30 羽田空港着(ANA)

海士から東京に一日で移動する場合、最速で到着するのがこのルートになるかと思われます(※高速船を利用すればさらに早いですが、欠航のリスクが高いため、おすすめしません)。フェリーからJRへの乗り換えの時間が短いですが、もう一つ後の電車で移動しても飛行機には間に合うはずです。

昼食を境港と空港どちらで取るかに合わせてJRを選ぶとよいでしょう。

◆海士→東京 15時過ぎ発→22時ごろ着

※2012年時点での情報です。ダイヤが変更になっている可能性がありますので、事前に必ずご確認ください。

15:15 菱浦港発 → 17:55 七類港着(フェリーくにが)
18:00 七類港発→ 18:30ごろ 米子鬼太郎空港着(米子駅行き連絡バス)
20:45 米子鬼太郎空港発 → 22:05 羽田空港着(ANA)

海士での滞在時間を可能な限り伸ばしたい方にはこんなルートもあります。注意点はやはり七類港からのバスへの乗り換え時間の短さです。18時発の連絡バスを逃すとタクシーに乗らざるを得ません。バスはフェリーから降りる客を待ってくれますが、あまりゆっくりしすぎると置いていかれます。

東京までの移動中に夕食を済ませるなら空港で食べるのが現実的ですね。

◆海士→東京 9時半ごろ発→20時過ぎ着

※2012年時点での情報です。ダイヤが変更になっている可能性がありますので、事前に必ずご確認ください。

09:40 菱浦港発 → 13:10 境港着(フェリーしらしま)
13:20 境港駅発 → 14:05 米子駅着(JR)
14:28 米子駅発 → 16:38 岡山駅着(JR・特急やくも)
16:49 岡山駅発 → 20:13 東京駅着(JR・新幹線)

飛行機でなく陸路にて東京へ行くルートです。当然ながら大阪、京都もこの乗り換えでOKです。このルートは移動時間の長さもさることながら、乗り換え時間の短さがネックになります。僕もこのルートを使ったことがありますが、米子駅で駅弁を買えないと昼食を食べ損ねます。海士であらかじめお弁当を買っておくといいかも。

 

以上はあくまでモデルであり、他にも隠岐空港を利用するルート高速バスを利用するルートもあります。米子~大阪間は高速バスで約4時間新幹線よりも早いし安いです

時と場合によっていろいろ検討してみてください。

※諸注意※

(1)「隠岐汽船」のフェリーは便数が少ない

リンク先の時刻表を見ていただければ分かりますが、フェリーは便数が多くありません。例としてお盆を除く春~秋シーズン(3月1日(木)~8月8日(水)・ 8月18日(土)~12月31日(月))の時刻表(H24年版)から引用すると、海士町へのフェリーは以下の2つがメインになります。

・09:30 七類港発 フェリーくにが
・14:25 境港発 フェリーしらしま(※別府港で隠岐観光の内航船に乗り換えて菱浦港へ移動)

これ以外に高速船が利用できます。9月1日(土)~10月31日(水)のシーズンでは以下の便が利用可能です。

・11:50 境港発 レインボー2(※別府港で隠岐観光の内航船に乗り換えて菱浦港へ移動) 
・15:45 七類港初 レインボー2

しかしながらこの高速船も利用には注意が必要です。それについては後述します。

(2)「隠岐汽船」のフェリー&高速船は時期によってダイヤが変わる

先に少し触れましたが、フェリーは時期によってダイヤが変わります。時刻表(H24年版)にも記載がありますが、特に冬季(概ね1月~2月)は便数が減りますので、注意が必要です。

高速船に限っては冬季(概ね12月~2月)は一切運行しません。要注意です。

(3)フェリーは欠航する場合がある(高速船はしょっちゅう欠航する)

島の人間にとっては当たり前のことですが、フェリーや高速船は欠航する場合があります。欠航の理由はほとんどが天候(波風が強い等)ですが、時折故障のため欠航する場合もあります。運行情報は隠岐汽船HPで確認できますので、参考にしてください。

特に冬場は日本海が荒れるため、フェリーが欠航することもあまり珍しくありません。暴風雨、台風も要注意です。概ね、波が4,5mあたりになると欠航の確率がかなり高まります。漁師さんは波が読めますが、そうでない人は「波浪予測」を参考にしています。また、強風の影響で欠航する場合もあります。

さらに要注意ポイントですが、高速船はめちゃめちゃ欠航します。波が2mくらいでもあっさり欠航します。そのため、島内の人は高速船を利用する際には欠航した場合の代替案を持っていることが多いです。絶対に帰らなければ行けないような予定が控えている場合、高速船の利用はオプション程度に捉えておいた方が良いかもしれません。

(4)高速船は速いが高い

高速船はフェリーの倍近く速いです。が、その分倍近く高いです。僕も乗ったことがありますが、速いし、揺れも大きくないし、フェリーよりは快適でした。ご利用は計画的に。

なお、フェリーの料金は片道3000円程度、高速船は片道6000円程度になります。フェリーは往復(2週間有効)で買うと多少は安くなりますので、おすすめです。(※2013/02/28訂正:往復割引は島内在住者限定でした。失礼しました。)

(5)フェリーは雑魚寝が基本(高速船は座席)

フェリーは基本的に席が決まっておらず、雑魚寝の形式になります。船内には枕(無料)と毛布(30円)が備え付けられており、靴を脱いでカーペットにごろんと寝転がるのが基本です。長旅のため船酔いの恐れがありますが、予防法としてはさっさと寝てしまうのが一番です。たまに旅行客のおばちゃんが出航からずっとおしゃべりを楽しんだ挙句、船酔いで残念なことになっている場面を見かけます。乗り物酔いが心配な方は酔い止めの薬を飲むことを強くお勧めします。

基本、雑魚寝となります。明るいところで眠れない人はアイマスクなどを用意したほうが良いでしょう。なお、混雑時(連休、お盆など)は横になれなかったり、カーペットに座れずゴザを廊下に敷いたりといったケースに遭遇します。乗船前から早めに並んでおけば席を確保することができます。

通常の料金では二等室になりますが、お金を追加で払うと特別二等室に移ることができます。設備はさほど変わらないようですが、料金が上がる分混雑を回避できます。なお、等級変更は乗船したあとでも可能です。特別二等室に入ると係員の方が切符の確認に来るので、そのときに等級変更分の料金を支払えばOKです。

フェリーの進行方向と平行に寝て、できるかぎり船の真ん中にいるようにすると船酔いを避けやすいそうですよ!

(6)本土側の港は境港と七類港の2箇所…お間違えなく!

海士町の港は「菱浦港」のみですが、本土側は「境港」と「七類港」の2箇所あります。本土の港が二箇所あるということを認識せず、間違って別の港に行ってしまう方がたまにいらっしゃるようです。

本土からのフェリーは基本的に朝は七類港、昼は境港から出ます。季節ダイヤによって変わるかもしれないので、事前に自分の目で確認することをお勧めします。

余談ですが、僕の友人が海士に来た際、こんな失敗談があります。彼らは隠岐汽船HPの「運行時刻検索」を利用したところ、出発地を境港にして検索したことで午前に七類港から出るフェリーの存在を知ることができず、境港から出る高速船に乗る計画を立てました。ところが肝心の高速船が欠航になってしまい(フェリーは通常通り運航)、結局昼の便まで境港で待つ羽目になりました。七類港の存在をきちんと伝えていれば……と悔やんだ覚えがあります。

(7)羽田-米子間の飛行機が高い!

飛行機は高いです。割引がない場合、片道で3万円を超えます。旅割(二ヶ月前とか一ヶ月前とかに予約、早ければ早いほど安い)を利用するのが無難です。

島内のアクセス

島内の移動手段としてはバス、タクシー、レンタカーが考えられます。また、隣の島に移動する際には「隠岐観光」(隠岐汽船とは別会社)の内航船を利用します(フェリーでも島の間を行き来できますが、多少時間がかかります)。

海士町の港(キンニャモニャセンター)には「海士町観光協会」の窓口があります。島内で体験できるプログラムなども紹介してもらえるので、困ったらこちらへ。

また、港にある「常識商店」では「AMAP」という地図を販売しています。1つ500円ほどですが、移住して間もないIターンも重宝するような素敵な地図です。こちらも利用してみるとよいでしょう。

 

以上、簡単ではありますがアクセスについてまとめてみました。みなさまの参考になれば幸いです。

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秋田魁新報の「北斗星」で海士町が紹介されています

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秋田魁新報の一面のコラム「北斗星」で海士町が紹介されています。

北斗星(3月25日付)|さきがけonTheWeb

※現在は削除されてしまったようです。

秋田出身ということで、海士町観光協会が運営する「離島キッチン」の佐藤さんと僕も紹介されています。

海士町には、秋田が学ぶべきポイントがいろいろあります。
「ヨソモノ」の受入はその一つ。

とかく「閉鎖的」と揶揄される秋田(県民)。
しかし、これが田舎では至極当然であるということを認めなければ、話は進みません。

それはIターンを積極的に受け入れている海士町であっても当てはまることです。
むしろ、離島という条件下で、海士町は昔ながらのコミュニティをより色濃く残しています。
そんな海士町でIターンが自分の言いたいことだけ言い、田舎の論理を無視する振る舞いを見せたら、たちまち総スカンを食らうことになります。
それでも、海士町には多数のIターンが集まっているのです。
ここに大きなヒントがあるのではないでしょうか。

海士町のIターンである自分が学んだことをきちんと秋田に持ち帰らなければならないと改めて思うのでした。

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Something Good:不確実な時代におけるソーシャルデザインとは

カテゴリ:読書の記録

 greenz.jpを運営するグリーンズが編集した本書。

知り合いにお借りしたのですが、一気に読み終わることができました。
本書ではgreenz.jpでこれまで紹介されたプロジェクトを中心に、「ソーシャルデザイン」の事例が列挙されています。

ではグリーンズが考える「ソーシャルデザイン」とは何でしょうか?
ひとことで言えば、「社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること」です。

ソーシャルデザイン

各種メディアにも取り上げられ注目を集めている秋田の「トラ男」プロジェクトも掲載されています。
ページ数もそう多くないので、ことあるごとにパラパラと眺めるのが良さげな一冊です。

「いいこと」だからといって受け入れられるわけでもない

本書に掲載されているプロジェクトを見ると、「いいこと」であることが一目で分かります。
しかし、各プロジェクトが始まった当時に遡ってみれば、必ずしも周囲からそう見えていたわけではないはずです。

「マイプロジェクト」を続けていく過程で、いろいろな意見を耳にすることがあります。アドバイスと言いながら、凹むようなことしか言ってこない方もいます。
極論、言わせておけばいい、と思います。

(中略)

若い人は誰も寄り付かない街だった寿町が様変わりしたのも、コトラボの岡部さんたちがさまざまなプロジェクトを仕掛け続けたからでした。今や世界中の若いクリエーターたちが噂を聞きつけ、さまざまなかたちで街に新しい風を吹き込んでいます。
そう、変化は必ず起こるのです。

ソーシャルデザイン

社会の制度を変えるわけでもなく、大きな投資があるわけでもなく、必ずしもインパクトのあるプロダクトを流通させるわけでもない。
このような取り組みは「何かいいこと Something Good」ではありますが、どのような変化が起こるかはやってみなければわからないことの方が多いと思います。
やっている側ですら、あらかじめ何らかのゴールイメージを持っていたとしても、それが確実に起こることだと確信できていない場合がほとんどではないでしょうか。
ましてや周囲からしてみれば、「そんなことをなぜわざわざやる必要があるのか」という疑問を持つのは、むしろ当たり前のことのように思います。

短期的な利益にばかり目がいく時代に

「いいこと」への第一印象が悪くなりがちなのは、現代社会が不確実性に満ちていることと関連付けることもできるでしょう。
今や日本の将来はもちろん、1年後に自分がどのような状況に置かれているかすら予測がつかない時代です。
それはなぞるべきロールモデルや(例えば終身雇用のような)集団的な保障が失われたことも一因と考えられます。
(このような流れの中で、自己啓発本が流行し、自分で何とかする「自己責任」論が蔓延しているように感じられます)

不確実な時代には、今すぐには結果が出ない長期的な利益よりも、今すぐに結果を得られる短期的な利益に目が行きがちです。
最近読み始めた宇野重規著「〈私〉時代のデモクラシー」では、この点について様々な論者からの引用を交えつつ議論がなされています。
その一節を以下に紹介します。

このような社会で見失われがちなのは、長期的な視点です。あるいは、いますぐには結果の出ない、未来においてのみ、その意味がわかるような企てといえるかもしれません。ちなみに、現代社会に適応するために必要な行動や生き方の原則を、「ノー・ロングターム(長期思考はだめ)」と表現したのは、アメリカの社会学者リチャード・セネットです(『それでも新資本主義についていくか―アメリカ型経営と個人の衝突』)。

〈私〉時代のデモクラシー

〈私〉時代のデモクラシー」では、昨今盛り上がりを見せるキャリア教育についても「ノー・ロングターム」の様相を観察できるとしています。
確かに、現在のキャリア教育は、長いスパンでキャリアを形成することについて深く考える余裕はなく、「進路指導」の延長として、「出口(進路)さえ決まればいい」というスタンスで行われていることがほとんどです。
また、キャリア教育の一環として「○○力」の育成についても注目を集めているところですが、これも具体的にメリットのある能力を身に付けさせる、という視点が絡んでおり、即効性を求められていることが窺えます。

だからこそ「Do Something Good」

「Something Good」は必ずしも短期的なメリットを生み出すことができるとは限りません。
むしろ、「きっと何か良くなる」「今やらなければ手遅れになる」という「遠い将来のメリットのための投資」としてのニュアンスを多分に含んでいることと思います。

「Something Good」がなぜ求められるのでしょうか。
長期的な視点がなければ、目に見える利益がすぐ現れにくい交流や教育、社会の格差、環境問題などへの投資ができないからです。
この視点こそが、持続可能な社会をつくるために必要なのです。

海士町の「AMAワゴン」という取り組みを見ると、僕は特にその必要性を痛感します。
「AMAワゴン」は一橋大学の学生が海士町に来たのがきっかけで始まった交流事業で、参加者の他に毎回講師がつき、住民との交流や中学校への出前授業などを行います。
このAMAワゴンに参加した講師や参加者をきっかけに移住した人もおり(僕もその一人です)、島外の大人との交流を通じて地元の子どもたちの意識にも無視できない影響が出ているように思います。
海士ファン拡大にも寄与しており、都内での海士のイベント開催時にもAMAワゴン参加者が集まる他、その知り合いもイベントに参加し、ファンの輪がじわじわと広がっているという効果も見られます。

このAMAワゴンは、見た目としては単なる「交流」でしかなく、観光ツアーとしての利益を見込めるものでもありません。
海士ファンが増えるかもしれませんが、しかしそれがどのような利益につながるのかを実施前から明らかにするのは難しいでしょう。

それでも、海士町はこの交流事業に投資することを決断し、これまでに15回実施しました。
まさに「Something Good」の好例と言えるでしょう。

「Do Something Good」のコツ

短期的な利益に偏りがちな社会で長期的な利益を追求することは至難の業です。
この「ソーシャルデザイン」で紹介されている様々なプロジェクトはそのコツを学ぶのに適していると言えます。

本書の事例を踏まえながら、そのコツとなりそうなものをリストにしてみました。

1.継続する

プロジェクトの性質上一度で終わるようなものでない限りは、何よりも継続が第一だと考えます。
WE LOVE AKITAも活動を始めて4年目になりますが、停滞するときもあったものの、ファーマーズマーケットや他団体との連携を通じて、学生が集まりだしたり、率先して企画を生み出す人が参加してくれたり、秋田に帰ったメンバーで動けるようになったりと、どんどん面白くなってきています。
海士町のAMAワゴンも、15回まで続ける気概があったからこそ、メリットを享受できるようになったのだと思います。

具体的に効果のある施策を確実に仕掛けられる実力が重要と思われるかもしれません。
しかしそれを前提にしてしまうことでハードルも上がってしまいますし、そこまでの実力がなくともトライ&エラーを繰り返しながら徐々にインパクトを出すことに成功しているという事実を見逃してしまうことに繋がります。

一度のプロモーションでの話題性を狙うならば話は別かもしれませんが、「Something Good」を狙うのであれば長期的に関わることを前提に、少しずつでもプロジェクトを前進させていくことが重要です。

2.やってて楽しい

本書にも書かれていますが、楽しいということは重要です。
短期的にメリットがなくても、それに関わってる瞬間に「面白い」「楽しい」「またやりたい」と思えることが継続に繋がります。
インセンティブは何も目に見える利益に限りません。「やってて楽しい」は無視できない効果があります。

この点、社会の問題にコミットするNPO組織のような場合、「楽しい」を封殺してストイックに「使命感」や「コミットメント」を重視するケースもあるように思います。
が、これは継続を念頭に置いた場合は割と不利です。十分な「やりがい」があればいいのかもしれませんが。

3.味方を不幸にしない

プロジェクトに直接関わる人も、そのプロジェクトのメリットを享受する側の人も、いずれも不利益を被らない仕組みがベストなのは言うまでもありません。
誰かの”犠牲”や”不幸”の上に成り立つ活動は持続性がなく、どこかが疲弊した時点で運営がストップする可能性があります。
直接プロジェクトの運営に携わらない人たちであっても、きちんと”win”になれるようなデザインが求められるでしょう。

4.なるべく敵は作らない

何らかの形で社会の問題の解決に携わる場合や、競合する既存業者が存在する市場に参入するような場合、そこでの戦い方に気をつけるべきです。
「自分たちは相手より優れている」「あなたがたのここがおかしい、だからこうするべきだ」という態度は望ましくありません。
これは余計に「敵」をつくるリスクがあります。

ステークホルダーの中に自分たちのプロジェクトを妨げる存在がいないに越したことはありません。
「敵」を設定することは自分たちを妨害する障壁をわざわざつくりあげるようなものです。
また、そのような攻撃的な姿勢は、味方になりうる人たちにも悪い印象を与えることにも注意が必要です。

 

本書に溢れる様々なアイデアは、どれも面白く、参考になるものばかりです。
「マイプロジェクト」を何か持ちたいと考えている方、「Something Good」を志向する方、ぜひ手にとって読んでみてください。

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