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「技芸としてのカウンセリング入門」を読んだ感想まとめ

カテゴリ:読書の記録

一連のインタビューに少しでも参考になるかなと手に取った本書。カウンセリングは実践的・身体的であって、知的な活動で完結することはない、というスタンスが目を引いたのだった。

タイトルのとおり、全体を通じて著者の「カウンセリングはプラクティカルなものだ」という主張は一貫しており、従って取り上げられている事例も具体的でイメージしやすいものになっている。「カウンセリング」といってもコミュニケーションの一系統であり、そこには非言語的なやり取りが含まれていることもきちんとわきまえよ、という忠告は、本当にその通りだと思う(そこを自覚的に受信するのは僕の苦手分野だが)。

著者のカウンセリングのスタンスは、なんとなく、「マインドフルネス」の領域で大切にされているものと近い。たとえば、この辺は、まさに”それ”っぽい。

まず第一に、カウンセラーは、クライエントの体験を細やかにありのままに、そのままに聴いて受け止めようとする、ということが言えるでしょう。クライエントの話の背後に流れる体験の流れを感じ取ろうと意図しながら、リラックスして、自分の心に生じるがままにし、ただ感受するのです。

技芸としてのカウンセリング入門

そんなふうに思っていたら、実際に著者も第三章で「マインドフルに聴く」と銘打って言及していた。西村佳哲さんのインタビューのワークショップに参加していた時も、「これってマインドフルネスに近いんじゃないか?」と思いいたったことがふと思い出された。当時も今もマインドフルネスには全然手を付けていなくて、あくまでイメージだけど。

本書でインタビューにも活かせる観点はたとえばこんなところ。

クライエントの心の中の体験は、クライエントにしか分からない。クライエントだけが知りえること、感じうることなのです。同じ場面に居合わせて、同じものを見て、同じものを聞いても、人の体験はそれぞれにとても違います。そしてそれは、その人だけにしか知りようのない私的な世界の出来事なのです。

技芸としてのカウンセリング入門

僕は「相手の目からどんなふうに世界が見えているのかを共に体験させてもらう」ことを目指してインタビューに取り組もうとしている。それは、僕自身、「ああ、こういう経験があるってことは、こういう感想をもったのだろうな」とすぐに先回りしてしまう癖があって、そういう自分を矯正したいからというのもある。

カウンセラーの側の「こういう出来事があったら、きっとこういう体験があるんだろうな」という予想を完全に裏切るような体験が語られることがしばしばあるのです。

技芸としてのカウンセリング入門

もちろん、その点にもしっかりツッコミが入っている。僕も自分の予想をなんとか脇に置いておくことで、「おお、そういう結論に至るのか」といちいち驚きをもってきく場面に何度か出会えた。そうやってきく方が、そりゃあやっぱり楽しい。

第4章「応答技法」で紹介される「あいづち」や「反射」についても結構細かく書いてくれている。単純なようで奥が深く、しかし複雑なようでシンプル。テクニックというのは往々にしてそういうものなのだろう。

「ありのままに聴く」といっても、言うは易く行うは難し、とにかくやってみなければしょうがない。そういう機会を来週末に試しにやってみるが、そこでの反応を踏まえて、このきき方の広げ方を考えていきたい、と思う。

 

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