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「困ってるひと」に今年一番心を動かされた

カテゴリ:読書の記録


 

(今更な感もありますが。)

ずいぶん前から話題になっていて、今年の7/29にAmazonで注文した後、ずーっと放置したままだったこの本。
ほぼ日に著者の大野更紗さんのインタビュー記事が出ていたので、ふと思い出して、手にとってみたら、あっという間に読了してしまいました。
思わず引き込ませる文章もさることながら、壮絶な(というべき)難病の「当事者」としての出来事の数々に、思わず呆然としてしまう読後感に襲われました。

著者の大野さんは「筋膜炎脂肪織炎症候群」と「皮膚筋炎」という難病にかかりました。
「二十四時間三百六十五日インフルエンザみたいな状態」が続き、それ以外にも様々な症状を抱えています。
つまり、”人並み”の日常生活を送ることが困難になったということです。

この本は、いわゆる「闘病記」ではない。もちろん、その要素も兼ねざるを得ないけれど。

困ってる人

前書きのこの断りが、実は重要です。
本書は病気と向き合う人間の姿勢、命の尊さ、そして感動…という”よくある”「闘病記」とは大きく異なるものです。
ここに描かれているのは、普通の(?)女子大生が突如として「当事者」になったお話です。
そこには読み手がときに恥ずかしくなるくらいの率直で、等身大の著者の姿があります。

ここで多くを語るつもりはありません。
というよりは、うまくこの本の良さを語ることができません。
一つだけ言えるとしたら、2011年で最も心を動かされたのは、この本だということです。

大野  だから、あたりまえのことをていねいに伝えていくという作法が、これからの日本社会では、すごく重要なんじゃないかなと個人的には思っています。「おもしろいと思って、おもしろいのをつくる」というのはちょっと違って‥‥。

ほぼ日刊イトイ新聞 – 健全な好奇心は病に負けない。 大野更紗×糸井重里

口語体の入り混じる文章、「闘病記」を期待すると痛い目を見るようなエンターテイメント性には、賛否両論があるかもしれません。
実際、Amazonのレビューでも酷評している人がちらほらいます。
中には「闘病者」としての態度に欠ける、という視点もあるようですが、残念ながらそれは「バイアス」の作用だと僕は思います。
むしろ、「闘病者」に対して我々が期待してしまうようなメンタリティから意図的に距離を置くことで、「25歳の女の子で難病の当事者」というリアリティを正確に、かつコミカルでやわらかに伝えようとしていると感じました。
この本には誰も「悪者」が出てこないことも、そして著者自身でさえ「正義」でもなんでもないんだよ、ということも、説教臭い教訓を飲み込んで「当事者」であることに徹したことを示しているように思えてなりません。
本書は「あたりまえのことをていねいに伝えていくという作法」に挑戦した結果なのだと思います。

と、ここまで書いて、自分の言いたいことが分かりました。

この本に書かれていることは、「美談」でもなんでもないんです。
日本人は「自分で何とかする」美談が大好き?でも書いた、その「美談」です。

だから、いいんですよ。この本。


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