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フィンランドの大学・高等教育進学率に対する誤解

カテゴリ:世の中の事

高等教育進学率=大学進学率ではない

世界的な総合教育企業、英Pearson社が27日、世界の教育水準ランキングを発表した。
トップはフィンランドで、韓国、香港と続いて、日本は4位。英国は6位、米国は17位で、調査40ヵ国中ワースト3は、インドネシア、ブラジル、メキシコだった。

ランキングは、英国の経済雑誌『The Economist』のリサーチ部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットがまとめたレポート”The Learning Curve(http://thelearningcurve.pearson.com/)”に収められたもので、40ヵ国の教育水準を、質(学校の自治度、選択肢の豊富さ)、量(義務教育の年数、教師1人あたりの生徒数)、知能(国際学力テストのスコア)、教育成果(卒業率、読み書き能力、雇用)の4分野にわたって精査した。

日本は、OECD(経済協力開発機構)が2009年に世界の15歳を対象に行った学習到達度調査()で、香港、フィンランド、シンガポール、韓国に次いで5位に入った実績が評価され、総合4位だったものの、学校の選択肢の豊富さや、教員の質の指針の一つとなる教員給与水準で他のアジア諸国や欧州各国に比べて遅れが目立った。

レポートによると、1位のフィンランドは、子どもの考える力や応用力を伸ばすことに主眼を置いた教育制度で、少人数学級だが授業時間が短く、宿題もなく、放課後に塾に行く生徒も少ないという。対して、2位の韓国は、ペーパーテストの成績重視の暗記型カリキュラムで、多くの生徒が放課後も夜遅くまで塾で勉強を続ける。

教育に対するアプローチが正反対に見える2つの国がトップ2を占めたわけだが、専門家は共通項として、学校制度や教育そのものに対する国を挙げてのサポート体制や、整った教育環境、優れた教員養成課程があることを指摘。国全体の教育水準を引き上げるためには、優れた教員の確保と教育に価値を置く文化、環境づくりが必須と訴えた。

MAMApicks -子育てトレンド&育児・教育ニュースサイト- : 世界教育水準ランキング発表!トップはフィンランド、日本の順位は?

俄然注目を集めているフィンランドの教育ですが、 WEB上では誤解が混じった情報が散見されます。

フィンランドの高等教育進学率は2004年度時点で87%、日本は54%となっています。
この数字だけ見て、「フィンランドの大学進学率は高い」と捉える方が非常に多い。

しかしながらこれは大嘘です。
フィンランドの四年生大学の進学率は30%程度(※1)であり、残りは職業教育を行うポリテクニックが占めます。
ポリテクニックも四年制ですがこちらは実学重視であり、主に職業高校の卒業生が進学先としています。
大学では修士号、ポリテクニックでは学士号が付与されることからも、いわゆる”大学”と同列ではありません(※2)。
一般的な四年制大学の進学率で言えば、日本の方が上なのです。

ちなみに日本の高等教育進学率も、通信制大学や専修学校(高専や専門学校等)を含めれば75.9%(2004年度)だそうです。

そもそも高校の認識が日本と違うフィンランド

この違いはフィンランドの中等教育に注目することである程度理解できます。

フィンランドの高校進学率は概ね6割程度で、残りの3割は職業学校に進学します
(ちなみに残りは留年や就職だそうです)
フィンランドの高校は普通高校であり、高校に進む生徒は基本的に大学進学を目指します。
小中時点で成績が芳しくなく大学進学の意思がなければ、職業学校へ行くのが一般的。

日本のように偏差値による輪切りがなく、高校間の格差はほとんどないことも特徴です。
住んでいる地域によって進学先が決まるので、高校内での格差はある程度ありますが、入学時に一定程度の学力は保証されているということですね。
義務教育段階の留年もあるので、小中学校卒業時にある程度の学力を身につけさせることはコンセンサスとなっているようです。

日本はストレートに義務教育から高等教育まで進むのが当たり前で、職業教育という選択肢も少なく、かつ劣っているとみなされやすいものですから、ジョーシキがかなり違うといわざるを得ません。

非常に当たり前のことを書いてしまいました。
これを踏まえてフィンランドの教育を参考にしなければ、片手落ちどころかかえって害悪になる可能性があるだろうと思ったので、あえてここにメモしておきます。
できる限り資料に基づいた記述を心がけましたが、誤りがあればご指摘ください。

※1:年度を指定していないデータが多かったため、正確さを欠きます。
※2:フィンランドでは大学とポリテクニックを優劣で比較するような見方はあまりないのだそう

参考:書評:「受けてみたフィンランドの教育」一生学び続けなければいけない時代におけるフィンランドの教育

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