Tag Archive: 婚姻率

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか-幸せな結婚を科学する

カテゴリ:読書の記録

 タイトルだけ見て、男女の脳の違いがわかるのかなあと思い購入。

原題は「FOR BETTER: The science of a Good Marriage」。
幸せな結婚に関する研究成果を整理して、多くの人がよりよい結婚生活を営めるようなアドバイスに落とし込んでいる本です。
いい意味で期待を裏切られた良書でしたので、ここに紹介したいと思います。

目次は以下のとおり。

はじめに 結婚を科学的に研究する

PART1 より良い結婚生活のために
01章 結婚の現実を知ろう-離婚は少なくなっている
02章 コミットメント(結びつき)の科学-浮気するのは遺伝子のせい?
03章 愛の科学反応-ロマンスは測定できる?
04章 セックスの科学-快適な性生活のための傾向と対策
05章 結婚と健康との関係-免疫力をダウンさせる結婚とは?

PART2 結婚生活に問題が生じたら-軌道修正するために
06章 あなたの結婚を科学する-夫婦関係の健康度を診断しよう
07章 衝突の科学-夫婦げんかのルール
08章 子育ての科学-子供は天使か、悪魔か
09章 家事の科学-雑用をめぐる戦争
10章 結婚の経済学-愛さえあれば・・・・・・大丈夫?

PART3 今日からできること
11章 ジェンダーロール(性別による役割)と主導権争い-対等な結婚というのは幻想か?
12章 結婚生活を長続きさせるためには-あなたの離婚リスクはどれくらい?
13章 良い結婚の科学-健全な結婚のための処方箋

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

幸福な結婚の科学

まず、冒頭から一節を引用しましょう。

幸福な結婚をして、良い結婚生活を送る秘訣とは、いったいなんだろう?
なぜ幸福な結婚と失敗に終わる結婚があるのかという謎を、数多くの人びとが何十年もかかって解明しようとしてきた。愛の荒波をうまく乗り切れるか、はたまた難破してしまうのか、それを左右するのはいったいなんなのだろう。一緒にいるときが一番幸せそうな夫婦と、離れているときが一番幸せそうな夫婦がいるのはなぜだろう?ストレスや不和や離婚のリスクから、結婚を守る手段はあるのだろうか?
じつは、こうした質問への答えは、思いもよらないところに見つかる。愛情や人間関係について最高の助言をくれるのは、セラピストやセルフヘルプの専門家ではなく、科学の世界の研究者たちなのだ。

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

日本ではともすれば「根性論」になりがちな結婚というものに、アメリカでは科学のメスを入れる取り組みが盛んに行われているそうです。
本書で紹介されている研究結果も基本的にはアメリカ国内が対象ですが、日本人にとっても十分参考にできるものだと思います。

たとえば離婚に関するデータ。
われわれのジョーシキとは異なる(が言われてみれば納得する)研究成果に目がいきます。

三世代の女性の十年後の離婚率
結婚時期  大卒 高卒
1970年代 23% 26%
1980年代 20% 25%
1990年代 16% 19%

1980年代に結婚したカップルの年齢および学歴別の二十年後の離婚率
全体の離婚率…39%
大卒、25歳以上で結婚…19%
大卒、25歳未満で結婚…35%
大学中退、25歳未満で結婚…51%

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

これらの統計から離婚率は「結婚年齢や、学歴、結婚した時代」の影響を強く受けていることがわかります。
先進国では晩婚化が進んでますが、結婚自体の成熟度もあがっている、と見ることができそうです。

この傾向について、ラトガーズ大学で結婚について研究しているバーバラ・デフォー・ホワイトヘッドは、「ソウルメイト(魂の友)結婚」と呼んでいます。
ソウルメイト結婚では男女ともに相手に期待するものが多く、「公平さ、協力、個人的かつ感情的な満足にもとづいた関係」を期待します。
それは裏を返せば、期待値が高いだけ大きな労力が求められるということにもなります。
結婚自体のハードルがあがったことで、結婚するカップルは全体として減る。
結婚に対するお互いの期待値の高さに答えるためには人間的な成熟が必要で、若いうちに結婚したカップルは期待に答えられずに離婚しやすくなる。
このデータ一つとっても、昨今の結婚の様相を想像することができます。

以下では特に僕が気になった点に触れていきたいと思います。

事実の解釈の仕方が現在の結婚の指標となる

幸福な結婚をしている人は、昔の話を笑いながらいかにも懐かしそうに話すことが多い-それがたとえ失業経験や貧乏の苦労話だったとしても。ところが、不幸せな夫婦は過去について否定的に語ることが多い。
たとえば妻が、夫と出会ったころに、はじめて彼のむさくるしい部屋を訪ねたときの話をするとしよう。
「あの部屋ときたら、それはひどかったの!靴下やビールの空き缶があちこちに置きっぱなしで。まさに独り者の寝床ね」
あるいは、こんなふうに思い出す妻もいるかもしれない。
「とにかくひどい部屋でした。あの人は、あの頃から本当にだらしのない人だった」
むさくるしい部屋の話をしているのは同じだが、表現はまるで違っている。だが、どちらの妻が幸福な結婚生活を送っているかは明白だ。

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

過去を振り返るときに、現在の結婚の幸福度を測ることができる、という話。

「この人!」と決めた相手を否定することは、その決定を下した自分を否定するにもつながります。
認めたくない不満は現在を語る上では表出しにくいものなのかもしれません。
一方、事実としての過去は唯一無二であっても、それをどう捉えるか、解釈の部分は振り返る現在に依拠します。
そこに現在抱えている不満が表出するということは十分にありえるでしょう。

事実をどう解釈するかについては、「代名詞の選択」の話も非常に面白いです。

幸福な夫婦は自分たちの話をするときに、「私たち」と言う。彼らが語る馴れ初めの話は、ふたりに共通する話題ばかりだ。ワシントン大学の研究者たちはこれを「私たち度(ウィーネス、We-ness)」と呼んだ。幸福でない夫婦はそうした一人称複数形の代名詞「私たち」を避けて、「私」や「あなた」ばかりを使う。
「私たち度」の例はたとえばこんな具合だ。
「私たちは山へハイキングに行って、ひどく道に迷ったわね。ふたりともすっかり景色に夢中になっていたから」と妻が言った。
「あれっきりハイキングには行かなかったけど、あれはぼくらの最高の旅だったよ」と夫が答えた。
自分たちを「私たち」と考えない夫婦は平行線をたどるような生活をしていることが多く、互いに結びついていると感じていない。そんな夫婦が同じハイキングの話をしたとしよう。
「あのとき、あなたが地図を忘れたから、何時間もかかってやっと家へたどりついたわ。私はすっかり疲れはてたわ」と妻が言った。
「いずれにしろ、きみはハイキングなんか好きじゃなかっただろ」と夫が言った。

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

本書で後述されていますが、「We-ness」はたとえば口論の際にも測る事ができます。
「お前はいつも」「あなたは決して」という言葉には「私たちはカップルである」という意識の薄れが垣間見えます。
結婚したからにはそれぞれの問題は二人の問題であると解釈し、協同して解決を図るのが望ましいはずです。
相手を責めるのは簡単ですが、残念ながらそこに生産性はありません。
こんな会話の端々に、結婚の幸福度がにじみ出てくるわけですね。

子供は幸福な家庭でよりよく育つ

結婚生活を考えるとき、子供の存在は無視できないものです。
むしろ子供が生まれて以降は、家庭において子供こそが主要になると言っていいかもしれません。

「夫婦がふたりきりで過ごす時間は、子供が生まれるとわずか三分の一にな」ると言われている中、夫婦の関係と育児とをどう両立させるべきか、これはなかなか難しい。
しかし、夫婦の時間を犠牲にすることが最良とは限りません。

ゆるぎない幸福度の高い結婚は子供にとって良いものだ。たとえそれが、両親と過ごす時間が少なくなることを意味していても、研究はまた、幸福な結婚をしている両親は、不幸せな夫婦関係に疲れきっている両親よりも教育的効果が高いと示している。
(※太字は引用者による)

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

子供のことを第一に考えるなら子供と関わる時間を最大化するという発想は一般的に思えます。
しかし、研究では夫婦生活を良好に保つために、夫婦二人きりで過ごす時間をつくることが、結果的に子供によい影響を与えることを示しているのです。
実際、子供もそれを願っているのです。
エレン・ガリンスキー博士の<子供たちに聞け>と名づけられた研究の結果がそれを物語っています。

ガリンスキー博士は子供たちに「ひとつの願いの質問」を投げかけた。それはこんな質問だった。「もしひとつだけ願い事がかなえられて、お父さんかお母さんの仕事についてなにかを変えることができるとしたら、どんなことを願いますか」というものだった。
親たちの六〇%近くは、わが子がもっと多くの時間を一緒に過ごしたいと願うと信じていた。ところが子供たちは、両親と一緒に過ごすのは大好きだけれど、たった一つの願い事に選んだのは、別のことだった。「子供たちは、両親のストレスが少なくなって疲れませんようにと、願うものなのです」とガリンスキー博士は言う。

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

結婚生活を幸福にするのはコミュニケーションの質と量

この本の主題は「結婚をよりよいものとし、一生を添い遂げられる二人になるためには」。
本書を読みながら感じたのは、結局のところ「コミュニケーションの質と量」が良い夫婦関係の秘訣である、ということです。

端的な例として、たとえば夫婦の軋轢の原因となりやすい家事の分担について。

家事労働についての広範囲なリサーチから得られた大まかな教訓は、家事労働で重要なのは、掃除、洗濯、炊事を誰がするかということだけではないということだ。家庭内の労働分配は、夫婦の相対的な力関係と、その結婚が真の意味で夫婦相互の協力のもとで成り立っているかどうかを物語る。家事労働と結婚に関する大多数の研究は、男性がもっと家事や子育てに貢献する必要があると教えている。女性たちは、家庭内でひどく重い責任を負い続けている。男性がもっと貢献するためには、女性は一歩引き、男性が一歩踏み込んで自分なりのやり方で家事をするのを、指導したり文句をつけたりしないでいる必要がある。単純なことのように聞こえるが、これは大きな一歩なのだ。女性が家事全般の監督権を手放すのが難しいのは、家が片付いていないと、夫ではなく自分の家事能力が身内や友人から批判されると信じているからでもある。たしかに、現実はそのとおりなのだ。
(※太字は引用者による)

夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか

監督権を持つ側(多くは女性)が相手の家事のやり方にいちゃもんをつけることで、相手はやる気をなくしますし、喧嘩の原因にもなります。
これは家事の分担を進める上ではむしろマイナスです。
相手のやり方が気に入らなくとも、質さえ保つことができていれば寛容になることが求められるのです。

これはまさに夫婦間のコミュニケーションのあり方を問われている、といえるでしょう。
その根本には「自分がされたら嫌なことを相手にしない」という当たり前の教訓があるように思えます。

さて、本書では研究成果を集約する形で、「七つの戦略」を提示します。
「うまくいっている夫婦が幸福を維持し、夫婦の絆をさらに強くするために活用している」戦略として紹介されています。

第1の戦略 良い出来事を楽しく祝う
第2の戦略 結婚をめぐる「五倍の法則」を利用する
第3の戦略 理想を高く持ちつづけよう
第4の戦略 家族や友人を大切にする
第5の戦略 パートナーに幸せにしてもらおうと期待しない
第6の戦略 とにかくセックスをしてみよう
第7の戦略 ロマンスを再燃させよう

これらは「コミュニケーションの質と量を高めよう」という一言に総括できるでしょう。
お互いが良き伴侶であるために何ができるか、相手のために何ができるか、二人のために何ができるか。
良いコミュニケーションの積み重ねが幸福な結婚を形成するのです。
重要なのは、幸福な結婚は二人で創り上げるものだということ。
「相性」は結果論であって、それを嘆く前に二人でできることは必ずあるはずなのです。

本書が極めて優れているのは、こういったアドバイスがデータや研究によって裏付けられている点にあります。
そのため、「あ、みんなそうなんだ」という安心感を同時に得ることができる構成になっていると感じました。

僕自身はまだ結婚していないのですが、参考にしたいことがたくさんありました。
350ページ超と非常に分厚い本ですが、どのトピックも一般的に関心の高いものになっているので、退屈する暇はありません。
ぜひ一度手にとって読んでみてください。Amazonでは電子書籍版も販売しているようです。

 

関連する記事

都道府県別・「デキちゃった結婚」の割合と県民所得

カテゴリ:世の中の事

2週間前くらいの記事だけれど(2011年4月11日現在の話)。

【4人に1人はできちゃった婚】全国「デキ婚ランキング」発表! | Menjoy! メンジョイ

“結婚期間が妊娠期間より短い出生=できちゃった婚の割合の全国平均は25.3%”だそうな。

<都道府県別 デキ婚ランキング

1位 沖 縄 38.2%
2位 佐 賀 33.3%
3位 青 森 32.4%
4位 熊 本 32.0%
5位 福 島 31.2%
6位 長 崎 30.5%
7位 秋 田 30.1%
8位 宮 崎 29.6%
9位 山 形 29.2%
9位 岩 手 29.2%
11位 茨 城 29.0%
12位 高 知 28.2%
12位 福 岡 28.2%
12位 鹿児島 28.2%
15位 大 分 28.1%
16位 宮 城 27.8%
17位 鳥 取 27.4%
18位 島 根 27.2%
18位 山 梨 27.2%
20位 福 井 26.9%
21位 群 馬 26.6%
22位 新 潟 26.5%
23位 愛 媛 26.3%
24位 北海道 26.0%
24位 和歌山 26.0%
26位 石 川 25.8%
27位 栃 木 25.6%
28位 岡 山 25.4%
28位 徳 島 25.4%
28位 三 重 25.4%
31位 長 野 25.1%
32位 静 岡 25.0%
33位 山 口 24.6%
34位 大 阪 24.3%
35位 東 京 24.2%
36位 岐 阜 24.1%
37位 埼 玉 24.0%
38位 千 葉 23.9%
39位 広 島 23.5%
40位 富 山 23.4%
41位 京 都 23.1%
42位 奈 良 23.0%
42位 香 川 23.0%
44位 兵 庫 22.9%
45位 神奈川 22.7%
46位 愛 知 22.2%
47位 滋 賀 21.6%

【4人に1人はできちゃった婚】全国「デキ婚ランキング」発表! | Menjoy! メンジョイ

滋賀の「デキ婚率」が最も低い、というのでぴんときた。
滋賀県は、たしか一人当たりの県民所得が意外と(失礼)高かったはず。 というわけで調べてみた。

取り急ぎ2007年のデータから。

都道府県名  デキ婚率順位  県民所得順位
沖縄  1  47
佐賀  2  33
青森  3  38
熊本  4  41
福島  5  18
長崎  6  44
秋田  7  36
宮崎  8  45
山形  9  34
岩手  9  40
茨城  11  12
高知  12  46
福岡  12  26
鹿児島 12  43
大分  15  31
宮城  16  32
鳥取  17  42
島根  18  37
山梨  18  25
福井  20  20
群馬  21  17
新潟  22  27
愛媛  23  35
北海道 24  39
和歌山 24  30
石川  26  16
栃木  27  8
岡山  28  21
徳島  28 23
三重  28  5
長野  31  22
静岡  32  3
山口  33  14
大阪  34  7
東京  35  1
岐阜  36  24
埼玉  37  15
千葉  38  11
広島  39  10
富山  40  9
京都  41  13
奈良  42  28
香川  42  29
兵庫  44 19
神奈川 45  4
愛知  46  2
滋賀  47  6

図録▽1人あたり県民所得ランキングと地域間所得格差の推移

デキ婚率と県民所得

見づらいのと、2010年度と2007年度のデータを比べているのがいけてないが。
ざっくり言えそうなことは、県民所得が低いほどデキ婚率が高い、ということ。
逆に言うと、「できちゃった」というイベントに頼らない計画的な結婚が少ない、ということになる。
計画的な人たちほど、結婚のハードルをきちんと見積もることができる。
しかし、そのハードルが高すぎて、断念している人たちが増えている。 そんな風に僕には見える。

参考:秋田の婚姻率が低いのはなぜか―結婚しない/できないの根本

デキ婚は増えているのか

というわけで一応比べてみた。

平成 婚姻件数 デキ婚数
7  557 125 
8  563 125
9  559 126
10 571 136
11 565 141
12 569 150
13 559 154
14 555 155
15 531 143
16 522 139
17 497 132
18 507 137
19 503 133
20 500 131
21 494 125

平成22年度「出生に関する統計」の概況 – 厚生労働省 (単位は千人)

デキ婚数は、ある程度総婚姻件数と同じように動いているようにも見える。
つまり、割合としてはそこまで大きく変わっていない。
ところが、平成7年と平成21年を比較すると、デキ婚による嫡出第一子出産数は同程度なのに、 嫡出第一子出生数全体としては減少している、という状況になっている。
デキ婚が増えている、というより、デキ婚じゃない結婚が減っている、という言い方が正しい。

その原因についても「秋田の婚姻率が低いのはなぜか―結婚しない/できないの根本」で触れている。

関連する記事

秋田の婚姻率が低いのはなぜか―結婚しない/できないの根本

カテゴリ:世の中の事

秋田の婚姻率の低さはいったい何が原因なんだろうね、という話。

秋田は出生率は全国平均より高いが、高齢者比率がそろそろ全国一位であり、 このままだと人口は激減します。
だから少子化対策をしなければならない、という話になっています。

以前の記事…都道府県別出生率の違いとその原因について
→「女性の労働環境と結婚率・少子化の関係-都道府県別比較で分かること-

そこでTwitterで話題になっていたのは、「秋田の婚姻率はなぜ低いのか?」。
県では婚活事業を推進しているが、効果を疑問視している県民はきっと多いに違いありません。
秋田の話題が滅法好きな僕もその話についつい口を出していました。
僕の仮説は一言でいうと、「結婚のハードルが上がっているから」。
これは秋田に限ったことではないが、”大前提”になりうる話だと個人的には思っています。

@ ファイナルアンサーじゃないですけどね。僕は結婚したいと何となく思ってますけど。極論を言うと結婚に決意は求められても、根性とか気合とか「超いい人」であることが求められなくなったら楽だなあと思います。
@kamioka
Yushi Akimoto

僕は結婚したいと思っていますが、なんとなく「大変そう」というイメージがあります。
「夫」に対する世間のイメージは、仕事ができて、妻に理解を示し、良いパパの素養がある…etc
「そんなハイパーなダンナがどこにいる!」と僕は言いたくなります。
「全方位的にいい人」でなくてもいいのならば、僕はずいぶん「楽だなあ」と率直に思うわけです。

自分でつぶやいて思ったけど、結婚ってなんかすごい努力が必要っていうのが常識になっているような。
@kamioka
Yushi Akimoto

女性だって「妻」となることになんらかのプレッシャーを感じていると思うのですが、 つまり「結婚は大変」ということになっている、というのが日本の現状としてある、と感じます。
“結婚できない/したくない理由は、「大変」だから、ということに他ならない” ということを前提に考えてみると、構造が見えてくる。
そんな気がしてきました。

@ 個人の問題解決ならコーチングとかカウンセリングを頼るくらいしか思いつかないです。全体としては、要は相手を選ぶ自由が保障されていることに加えて、求める条件が高いというのが現状で、前者は必然な気がするから、後者を是正することを考えます。(続く)
@kamioka
Yushi Akimoto

「じゃあ結婚したくない/結婚が不安な人を結婚させるには?」と聞かれたので、その回答。
結婚への不安とかそこから来る拒否感というものを「個人」のせいとするなら、 とりあえず自分が具体的にどんなことを懸念しているのかを把握した方がいいでしょう。
ライフハックじゃないけれど、ネックがわからないと問題解決はしづらいわけですから。
そういう意味では「コーチング」や「カウンセリング」の手法は有効かもしれません。
(実はかなり適当な回答です。個人の問題と考えたら、問題は個人ごとに違うのだから。)

全体として、その心理がどんな構造によって生み出されているのでしょうか。
まず一つは「選択の自由」が恋愛―結婚の前提になりつつあること。
ネットでも恋愛コラムは常に供給されている状況であり、 「もっといい人がいる」と考える余地ができた反面、競争も激化しています。
もう一つは、先述のような 「いい働き手であり、いい夫であり、いいパパである」というようなハードルの高さによって 息苦しさを生み、多くの人がたじろいでいる、という状況になっているのではないでしょうか。

@ また極論ですが、例えば結婚後の生活費、養育費の半分を国や自治体が補助してくれる制度があれば、直感的には婚姻率はぐっと上がると思います。つまり、ハードルを上げているのはお金で、「お金」単独でハードルをクリアする人が少ないから、他のもので補完しようとしているのかなと。
@kamioka
Yushi Akimoto

このハードルを上げた要因というのは、ずばり「お金」なのではないでしょうか。
生活コストの上昇により、確実に「お金」の必要な額は上がりました。
ところが、日本の平均所得はむしろ下がっており、 「お金」がある人との結婚はまさに「競争」となっています。
「お金」だけで結婚市場で一人勝ちできる人は少ないとなると、 今度は「お金」で足りない部分を他の能力(やさしさ、理解、価値観etx)で補完するようになります。
「お金」がより多く求められるようになったために、他の能力のハードルも高くなったのではないかなと。

と言い切ってしまったが、世界的に「仕事と家庭・子育ての両立」に非常に関心が高いのは、仕事をしなければ生活できないからで、昔みたいな専業主婦モデルがキープできる経済的余裕があればそもそも両立を考える必要はなくなる、と思う。
@kamioka
Yushi Akimoto

これは文字通り。
もし仮に経済的余裕が生まれたとすれば、共働きする必要はないし、 それでも仕事が大事というなら、保育所などを利用すればすむ話です。
夫婦間でワークライフバランスの実現に力を入れることだってできます。
「待機児童の問題はどうする?」とつっこまれそうだが、 「結婚できない/しない理由」がここでの主題なので、ひとまず置いておくことにしましょう(実際には保育所を増やすことで出生率、あるいは婚姻率もあがると思う)。

結婚が大変なのはお金のせいだとすると

当然ながら、実際には結婚したカップルに多額の補助を出す、というのは現実的ではないが、 「大変」なのは「お金」の問題だ、と示すことができれば、対策はずいぶん見えてきます。

秋田の県民所得は全国的に見ても高くありません。
小・中学生は学力が高い割に大学進学率が低いのも、その影響があるかもしれません。
そうであるとすれば、家庭の教育に関する費用の負担が大きいとも言えます。
僕の仮説を確かめる一つの方法として、県内で婚姻したカップルの年齢と年収の調査が考えられます。

10代後半~20代前半の低年収層と、20代後半~30代の高年収層に二極化するかどうか

前者はいわゆる「できちゃった結婚」カップルという想定。
僕の中学の同級生にもいるが、若いうちから子どもを持った人もいます。
この層は全国どこを見ても一定割合でいるはずです。
「できちゃった」から産む。そこに(失礼ながら)計画性は見られないように思えます。

後者のイメージは正社員や公務員からキャリアをスタートし、 職場である程度の地位を確保した段階で「ではそろそろ子どもを…」と言う感じ。
直感的には、両者の中間層にあたるカップルの数は少ないはずです。
年齢にはばらつきがあるかもしれないが、年収に関しては外していない、と思います…。

※2011/02/09追記
ちなみに「二極化」の傾向が見られるというコメントもありました。
「私の周りはそうだ」「私の周りでは違う」というご意見あればコメントいただけると喜びます。

秋田の婚活事業の是非

これまでの仮説を前提にすると、秋田県の婚活事業の効果はあまりないと考えるのが自然です。
結婚にこぎつけるのは、「お金に余裕がある人」か「お金以外の魅力がある人※」だからです。
(※「お金がなくてもこの人とならすばらしい家庭を築ける!」と思わせる魅力)

出会いの数は増えるかもしれないが、そこには激しい競争が発生しそうです。
もし婚活事業を進めるとすれば、上記の仮説に沿うような形として例えば民間の婚活サイトのように年収などを入力させるようにすればいいでしょう。
そのデータを元に男女が候補を選ぶことができればマッチングの可能性は高くなります。
(ということは民間の婚活サイトの手法は「優れている」かもしれない!)
もし「出会いがない」ことが婚姻率が低い理由であるということであれば、 県は常にカップル成約率の数字を追わなければいけないし、県民も厳しく追及する必要があります。
(結果的にこの事業で婚姻率が上がるのであれば言うことなしなんだけど)

※とはいえ「出会えない」という状況に対して機会を提供しているのだから、まったく効果がないわけではないと思います。
能力的に出会えない(コミュニケーション能力が乏しい)とか、機会がないとか、そういう人が仲介を得ながらとりあえず出会える、というのはずいぶんな進歩です。
無料で受けられる公的な支援は、民間業者のマッチングサイトよりも気軽に利用できますしね。

結婚できないのは個人のせいか

この件についてTwitter上でいろんな人のやり取りを眺めていると、 「文化」や「性格」など、個人の問題とみなす人が結構多い印象があります。
当然ながら婚姻率が上がったとしても結婚したくてもできない人はいるでしょう。
でも、マクロで見たときに「婚姻率が上がった」という事実こそが重要であり、 何らかの対策を講じることで結婚できるようになった人がいる、ということに注目するべきです。
本気で結婚したい人全員を結婚させると考えれば、個人の問題を解決することが必要になります。
しかし、少なくとも「県の少子高齢化対策」レベルでそれを目標にするのは非現実的ではないか、とも思うわけです。
その論点から外れない限り、根本を改善できるような有意義な議論はできません。
個人の問題に帰する行為は考えることの放棄である、と個人的には思います。
(と言ってもほとんどの人は気軽に立ち話をしている感覚なんだろうけど)

あ、もちろん僕が結婚できないのは世の中のせいだってことではないです!

関連する記事

  • Page 1 of 2
  • 1
  • 2
  • >