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アクションラーニング勉強会の振り返りを受けて(1)

カテゴリ:自分事

先日のアクションラーニング勉強会の際に出た
フィードバックを基に、もう一度勉強し直し。

その一旦の回答をここにまとめるつもりだったが、
長くなったので今回は1つに留める。

(1)「意見は質問に対する回答のみ」について

「質問」と「回答」だけだよ、と事前に強調したところ、
かえってそれが不自由だった、という意見があった。
個人的にはALの根幹を成すルールと理解していたが、
意義を伝えきれぬまま強いてしまった結果となった。

とりあえず冒頭の本から丸ごと引用してみる。

●・・・意見は質問に対する回答のみ

 質問は非常に多くの利益をもたらす。第1の基本ルールは、メンバー全員の気持ちを守りの立場から攻め(質問する)の立場へと転換することである。この基本ルールは、意見を述べることを禁止しているわけではない。実際、セッションでは通常、質問より意見の方が多い。質問に対し、他のメンバーから1つ以上の反応があるケースが多くなるからだ。
 しかし「とにかく質問が第一」と要求することによって、グループ全体の雰囲気が変わってくる。意見を述べたい、判断を下したいという衝動が、傾聴する、省察するという態度へと変化していく。ひとたびグループに問題が提示されると、メンバーはまず解決策を考えるのではなく、問題そのものを明確にするための質問をする。
 アクションラーニングの場合、質問の質および数と、最終的な行動および学習の質との間には相関関係がある。対話を生み出すために質問と意見のバランスを取ることは、守りと攻めの気持ちのバランスをとることでもある。

実践 アクションラーニング入門―問題解決と組織学習がリーダーを育てる

僕はこの箇所を繰り返し読んでいるが(付箋も貼っている)、
それゆえに意見や判断を加えようとする態度に敏感になっている。
過去のALの失敗も、ここに原因があったという反省もあるので。

制約のためにポテンシャルが発揮されないのは確かに困るが、
とはいえ「意見を言いたくなったら負け」という見方に現時点で変わりはない。

となると、「なぜ質問なのか」を改めて説明する必要があるわけだが、
問題(と思われたもの)の再定義こそが問題解決の最初の一歩であり、
そのためにこそ「質問」が有効である、というのが一旦の説明となる。

 グループがまずなすべきことは、問題の全体像をつかむ、すなわち「象を全部見る」ことである。目標設定や行動計画作成は、その後の作業となる。(中略)
 明白だが、なかなか実践しがたい問題解決の最初のステップは、それがどのような問題であろうと、問題の本質を知ることである。すでに聞いたり経験したりしているがゆえに、我々の多くは、何が問題なのか正確に認識し、理解していると思っている。さらに危険なことに、他の人もそのその問題について自分と同じように認識し、理解していると信じている。

(下線は引用者による)

実践 アクションラーニング入門―問題解決と組織学習がリーダーを育てる

コーチの立場から率直に言えば、前回のセッションでは
まさしく下線部で注意喚起された「思い込み」が支配的だった。

蛇足かもしれないが、最後にALのグループ内における
質問者(メンバー)の役割について引用をしておく。

 メンバーの第1の役割は、質問をすることである。自分のために質問をするのではなく、あくまで問題解決のための質問であることを忘れてはならない。自分のための質問というのは、例えば、自分だけに有利な情報を得たいがための質問、単に知識を得たいがための質問などである。
 グループは誰かの意見より、常に質問に注意を向けるべきである。質問に対して細心の注意を払うための、考えるための十分な時間を持つことが重要になる。時には問題を解決するために、ひと呼吸置くことも大切であり、メンバー全員が質問できるよう質問の機会を譲ることも必要である。
 メンバーが肝に銘じておかなければならないのは、問題解決ではなく、効果的な質問をするということである。効果的な質問をすることが、ひいては最良の問題解決につながる。たまには沈黙の時間があってもいい。

実践 アクションラーニング入門―問題解決と組織学習がリーダーを育てる

ここを引用しながら思ったことは、
「閉じられた質問」と「開かれた質問」があるということだった。

いわゆるYES/NOで回答できる・できないという分類ではなく、
その質問から生じた回答がシェア可能かどうか、という区別。
もう少し言えば、その質問自体がシェア可能かどうか、
「おおー」という共感、感嘆の声が上がる瞬間があるかどうか。

アクションラーニング初心者として偉そうなことは言えないが、
前回のセッションは「閉じられた」、共有不可能な質問が多かった。
誰かの質問に他のメンバーが白けるシーンを何度も見たからだ。

次回までに求められるのは、メンバーのリフレクションと思っている。
「貢献できなかったのではないか」と不安がる必要はないが、
「その質問は自分のどういう感性から生み出されたのか」について、
もっと言えば、自分がその場にどう関わるかについて、
メンテナンスを入れる機会を別途持ったほうが良いような気がする。

関連する記事

アクションラーニング勉強会の第2回振り返り

カテゴリ:自分事

第1回の振り返りはこちら↓

アクションラーニングの試行と備忘録

2か月ぶりに勉強会を実施。
今回は僕を含めて6名が参加。
男女比は半々、第1回目の参加者は3名だった。

今回、僕はアクションラーニングコーチ(以下ALコーチ)に徹し、
残りの5人がセッションする形となった。

問題提供者は前回の参加者から立候補。
質問する4名は3名が初参加で、1名は前回の問題提供者だった。
つまり、前回質問側だった人がいない状態でセッションが始まった。

セッションについて~前回との比較を中心に~

ALコーチの立場からセッションを眺めていた印象では

・前回に比べて「長い」質問が多い
・誰かの質問にみんなが重なっていくというよりは、
質問者一人ひとりが別スレッドで質問を重ねている感じ
・みんなが「おお」「なるほどー」となるシーンが少ない

といった点が前回と違って気になった。
セッションになるべく集中するようにしつつ、
その理由を考え続けた1時間だったと思う。

そして振り返りの中で出てきたフィードバックはこうだ。

・ほぼ初対面のメンバーがいるにも関わらず
お互いの自己紹介や抱えている課題の共有などなく、
緊張感を持ったままセッションが始まってしまった
・初参加で「質問」と「回答」のみ、というルールに縛られすぎた

これは主催者として大いに反省すべき点である。
僕自身は集まったメンバー全員と顔見知りだったので、
一人ひとりが場に感じる緊張感を意識することがなかった。
セッションの進行ばかり意識し過ぎたのもあるかもしれない。

次回はアイスブレイク含め、場づくりの意識を持つようにしたい。
また、ルールに縛られすぎた、という声については、
その裏にあるものをもう少し検討しておきたい。
第1回ではそんな声がなかったからだ。

効果的な質問に関する仮説

ALコーチと言う俯瞰的な立場から見たとき、
場にいい影響を与えているなあ、という質問の共通点は

・誰か一人でなくみんなの関心事である
・ある人の考えを強化するのではなく、
問題提供者への興味・関心が先行するような問いになっている
・前提に縛られず、問いが問題提供者に委ねられている

といった感じ。抽象的ではあるが、
要は質問者が自分の考えに固執することなく、
問題提供者自身に関心をかたむけるべき、ということか。
しかしこれも本当にそれだけなのかは検証の余地がある。

ALコーチのはたらきについて

今回は本格的にALコーチにチャレンジしたのでその感想も。

ALコーチとして内省の時間を挟んだのは

・ほとんど意見を言っているような質問が増えてきた
・問題の明確化よりも質問者の脳内の整理や
仮説検証のための情報収集が優先されている印象が強い
・質問者が偏っており、その流れが変わりそうにない

といった観点でもやもやが僕の中で募りはじめるタイミングだった。

1時間ちょっとのセッションで計3回内省を差し込んだが、
良い・悪いは別にして前後で流れに変化がでることは感じた。
が、質問者自身が内省によって方向転換をした、という印象はない。

内省を促すにはALコーチの質問が鍵なのだと思うが、
ここは明らかに準備不足だった。次までに復習しておきたい。

ところで、ALコーチの意義や僕自身のふるまいについては
今後フィードバックを集める予定だが、
振り返りの場で言及されることはあまりなかった。
(つまりそれだけ意識されていないのだと思うが)

今後に向けての課題

アクションラーニング自体をより良いものにするために、

・場づくりの重要性を認識し、アイスブレイク等意識して組み込む
・問題発見にフォーカスすることで学習は成立するという仮説の検証
・ALコーチの役割について復習
・セッション中の方向修正の方法の検討

など課題だらけだが、少しずつ前進しつつある。
あとは集まったメンバーの脳味噌も活用していきたい。

 

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アクションラーニングの試行と備忘録

カテゴリ:自分事

ぼんやりとした課題意識から出発し、
組織を越えてお互いの問題を共有するような場として
有志で勉強会を開こう、というのが最近の企て。

その勉強会のネタとして冒頭の本に代表される
「アクションラーニング(以下、AL)」を導入しようと考えている。

良質な問いを追及するアクションラーニングについてのメモ

というわけで先日ALを試行してみた。

思いがけずうまくいった(とみんなが感じた)のだが、
「なぜうまくいったのか」「うまくいっていないことはなかったか」等
自分の中で説明が付けられない部分も多い。

改めて「実践 アクションラーニング入門」を読み直しながら、
感じたことを備忘録的にまとめたい。

マルチプル問題アプローチの利点を生かす

今回集まったのは僕を含めて4名。計3組織からの参加となった。
年齢構成は20代後半~30代で、Iターンとしては平均的。
男女比はたまたま2:2とバランスがよかった。

今回の形式は参加する各自がそれぞれの問題を持ち寄る
「マルチプル問題アプローチ」に近い。
改めて該当部分を読んでみると、思い当たる節がいくつかあった。

最も大きな利点は、メンバーは自分の問題に専念できるので、結果として、問題への洞察力やアイデア、解決策を得ることができるということである。

実践 アクションラーニング入門

これはまさに狙うところであり、
呼びかけの段階での期待値に沿うところであった。

自分の部署外の人、または自分の部下でない人と問題を共有するとき、メンバーは、同僚と問題を話し合うときにはありえないと思われる、課題、懸念、各人の性格、脆弱さなどを共有する心地よさと自由を手に入れることができる。

実践 アクションラーニング入門

ここもある程度狙い通りだったと言える。
率直な質問と回答のやり取りの中で、
問題のベールが1枚ずつはがれていく感覚を共有できたと思う。

ただ、問題提示者は絶え間なく質問されることで
「逃げられない」「答えなければならない」と感じたと話していた。
この辺りのさじ加減は研究が必要そうだ。

グループに持ち込まれる問題は、その問題に直面しているメンバーにとって緊急で、個人的・精神的苦痛を伴うものである。あるメンバーにとって重要で意味のある問題の解決を手助けすることが、他のメンバーに満足感と充実感をもたらす。

実践 アクションラーニング入門

たしかに、何らかの充実感と言うか、
問題提示者の視点が共有されることで共感が生まれ、
問題が明瞭になることで健やかな気持ちになれた気がする。

当初の期待値を越える結果だったという感想ばかりだったのも、
事後の心地よさによるものだったかもしれない。

個人的な問題を他者と共有することは、意義ある洞察―自分のもんだいが決して特別ではないこと、他の人も似たような問題を抱えていること、自分はそれほどダメなマネージャーではないこと―を引き出す。この気づきが大いなる助けとなり、自信につながる。

実践 アクションラーニング入門

問題提示者が最終的に再定義した問題のありさまは、
僕自身にとっても大きな気づきとなっている。
最初に提示された問題がまさかそう再定義されるとは、
という驚きもまた、その気づきを深める方に働いた気がする。

総じて、ある一人の問題が解決されることで、
他のメンバーも学べると実感できたのは収穫だった。

「良質な問いの可能性」という仮説検証の失敗

一方、アクションラーニングの肝である
「質問」については手応えを得ることができなかった。

質問と回答を繰り返すことで、
確かに場には良い変化が幾度かもたらされたのだが、
(メンバーが「おおー」と声を上げるシーンはあった)
個人的な感触としては、それは問いの質というよりも
問題提供者の内省力に依るところが大きかったように思う。

幾度かの「おおー」のシーンを振り返ってみると

(1)先に提出された問題が書き替えられると「おおー」となる
(2)セッション中のリフレクション後に問題の書き換えが起こった
(3)問題を深めたり、具体的にしようとしたりするよりも
 視点を変えたりそもそもを問うた後の方が「おおー」となりやすい

という印象がある。
(1)については思い返してみると想定通りではあるが、
(2)については思わぬ副次的効果だった。
(3)についてもある程度想定通りではあるものの、
セッションにおける問いはきっかけにすぎず、
それをどう受け止めて展開させるかという点において
問題提示者に依拠していた部分が目立ったかなと。

個人的な物足りなさは、「問い」そのものによって
「おおー」となるシーンがなかったことによるのかもしれない。

もう少し回数を重ねることで要点が見いだせる気がする。
他の参加者のフィードバックも集めないと。

まとめ:収穫と今後の課題

[収穫]
・「質問」と「回答」に絞るやり取りの可能性を実感できた
→「おおー」となるシーンが生まれたのは大きい
・「楽しかった」という感想を得られた
・月1回開催の負担はそう大きくなさそうと思えた

[今後の課題]
・「良質な問いとは何か」というテーゼ自体の問い直し
→縛られすぎるとかえって迷子になりそうである
・リフレクションの質を上げる
→「おおー」となるダイナミズムをチームでつくれなければ
 ALで学び、持ち帰るということが難しい

総じて出だしとしては良好だったと思う。
この勉強会の後の話まで考えると複雑になるので、
まずは勉強会自体を良質なものにすることにフォーカスしたい。

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